連続花火が落ち着いたら、忠道はむつみ達を地上に帰した。涼香がむつみと茜を誘いかき氷を買いに行き、並びながら楽しく話している。むつみの顔は赤く染まり、他の二人の表情も出店の光やまた上がる花火に照らされていた。その様子を忠道は無表情だが、どこか穏やかな顔をしながら見つめていた。
唯花は友達のもとに行ったのだが、浮かない顔をしてすぐに戻ってきた。
「どうした」
「みんな彼氏のところ行っちゃって」
唯花はため息をついた。
「篠孝がいるじゃないか」
「篠孝さんは長野にいるでしょ。
同じ空の下でも、この花火は一緒には見れないのよね」
と、またため息をつく。
兄妹は並んで花火を見る。パンパンパアン、とまた花火が賑やかに輪をかけて上がった。さっと残り火が光って消える。その一瞬の光はまるで星のようだった。
ふう、と息をついて唯花はちょっと空を見上げた。さっきまで自分達が浮かんでいた空には半月に近い月と、夏の大三角の三つ星が見えた。もしかしたら、と目線を下げるとやや赤い星が目に付いた。
「藤野の告白で」
兄がいきなり話し出したので唯花は星を見るのを止めて話を聞こうとする。
「客観的に自分の想いが見てとれて、助かった」
どんっ、ぱらぱらと花火の音のする外で、忠道の声が目立って唯花には聞こえた。唯花は黙った。花火はますます数を増やし、黄金の稲穂を空にかける。残像もくっきり見えて、その滝のような、消える際が黄金の天の川のような花火に動かされ唯花は自然と言う。
「嘘だ、そんなの……。
兄さん、はじめからわかってたくせに」
ただ勇気がなかったくせに、と唯花は言いたかったが、ちらりとみた思っていたよりも切なげな兄の横顔に何も言えなかった。