もう寝る、とそそくさと唯花は部屋をあとにした。窓を開けて星を見ようと思ったが止めて寝床へ入った。
 唯花の閉じたまぶたの裏に映るのは、何十発もの花火の残り火の、星のようなきらめきだった。



 黄金色の花火の星空が、唯花の心をさあっと清らかにさせた。



 いつか、今日のような花火を、篠孝と自分と、そして兄と李亜とで見てみたい。その時に今日のことを李亜にそっと静かに、だけど可笑しく話してみたい。
 その頃、あのむつみという少女は誰に恋をしているだろうか。むつみと一緒にいた少女達も、いつかは誰かと恋に堕ちるのだろうか。あるいは誰かと別れているかもしれない。
 だけど、そうだとしても、と唯花は寝返りを打つ。慣れない浴衣で疲れたのだろう、すぐさま気怠い眠気が体に溶けていく。一瞬一瞬、段々と意識が揺らぐ中で、しかし花火のようにまっすぐに想いは打ちあがる。





 花火に似た一瞬のきらめきを――
 恋に堕ちる時のあの輝きを、忘れないでいてほしい。




 たとえ自分達の人生が、その花火に暗喩されるような、儚いものだとしても。






 純粋な少女達に唯花はそう願って、夢の世界へそっと降りていった。





(了)

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