「与一さんこそ」
「屋敷をぐるぐる回ろうと思ってなー……。どうも、おかしい感じがする」
と言って与一は目を伏せた。
「昼だから、ですね」
「ん。スピカ鋭いな。だけど女の子とお喋りしてるんじゃ気が抜けてると思われるぜ」
「カーレンが話しかけてきたんです」
私のせいにしないでよ、とカーレンは口をとがらせる。
「与一さんは、お姉さんや妹さんいるの?」
しかしすぐにカーレンは笑顔になって訊いた。
「いない。わからねえ」
与一はあっけらかんと言った。
「生みの親が誰だかすら知らねえよ。育ての親も死んじまったけど。
……そういやそもそも子供が出来ないからって俺は拾われたんだった」
だから、きょうだいはいない、と与一は笑った。
「そうですか。――ごめんなさい」
気にするなと与一はまた笑った。
スピカは与一の銀色の髪や、緑色の瞳を見る。
彼は異国の血を引き、和秦で育ったのだろう。
「何だ? じーっと見てさ」
「ああ、すいません。
――与一さんは、きっと僕と同じで和秦ではない国や、大陸の血を引いてると思って」
「多分な」
スピカは水色に近い青色の美しく澄んだ髪に、白い肌と細い体、蒼い瞳を持っていた。
あきらかに、和秦の人間のものではない。まさに異国の乙女と称しても差し支えはあるまいが、あいにくスピカは男性である。
与一は伸びをして、空を見上げた。微かにスピカの瞳が捉えた彼の目つきはどこか遠い。
何かを思い出したように話し出す。