正午に近づいた頃である。


「なんだか今日は暑いですわね」

 杜甫が言った。太陽は雲に隠れていたが、秋にしては湿度が高く、風は生暖かかった。どんよりとした空の表情が、杜甫の不快指数を高めている。
「お姉様、わたくし薄着にしてまいります」
と、杜甫は東対の自室に向かったきり、昼食の時刻になっても現れなかった。食べることが好きという、自分の食欲に忠実な杜甫のことなので、すぐ来るだろうと待っていたが、様子がおかしい。

「見てまいります」
「俺もおともしましょう」

と、李白と花火は寝殿を出て東対に向かった。
 宝物のある西対は今、与一とスピカとカーレンがいる。寝殿にはオーレが残った。
 オーレは二人が出てしばらくしてから少しの間ふうと心地息をつき目を閉じた。




 そしてすぐ目を開き、何が起きたのか彼は突然御簾を乱暴に上げ、外に飛び出す。
 オーレはまばたきもせず、渡殿の上に立ちつくした。


 ただ屋敷に異変が起こり、増えつつあることを感じ取っていた。






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