白い襦袢で包まれた体を、刀か何かで斬り裂かれていた。



 左胸から、右の腰まで斬られていた。
 白は赤に染まり、やがて黒へ変色しようとしている。
 首筋の頸動脈あたりも、まるで弓のような斬り口が残されていて、どくどくと血が出ている。


 杜甫は血の海に沈んでいるのだ。




 杜甫は、死んでいた。




「死――――んでい、る……?」


 李白は長い時間をかけ、それだけを言った。
 杜甫の顔に残る苦痛の表情が、李白を止めた。
 空気が、すべての体液が、そのためにざわめいた。

 この世の何もかもが永遠に止まるような力が李白に、働いた。

 しかし李白がその言葉を言い終わるやいなや、部屋の隅からまるで竜が吐き出したかのように火の手があがった。李白はそれにも驚く。
 火の輝きが杜甫の死に顔をありありと際立たせ、李白の網膜に、脳髄に、無理やり焼き付けた。

 李白は動けない。

 みるみるみるみる、火は辺りを喰らい尽くしていく。その尋常でない速さに、花火は李白の青白い手首を掴んで外に飛び出した。
 李白はがくがくと、糸の切れた操り人形のようにただ体を揺らしていた。


 表情は、杜甫の亡骸を見てから、一つとして変わっていない。

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