京に向かうことを告げ三人は再び姫のもとへ足を進めた。近づくにつれ、光は強さを増した。
 三人はいよいよ御座に入り申し上げる。



 三十年前から変わらない様相。白く塗った柱と、のぞける太陽と空。
 どこに中心があるか解らないが、陽姫が放ち、自分たちを守るような光がそこここに満ちている。



 三十年前に、スピカ達の分身と言ってもいい珠がはじかれ、運命が廻り始めた。
 そして三十年は時に穏やかに、時にめまぐるしく廻り、一人の姫をここに戻すに至った。
 カーレンはぼんやり太陽と、御座に浮かぶ光を見ていた。


 火の巫女は何を感じているのか、一番早く生を受けた獅子は何を想っているのか、そして長く暗黒をさまよっていた乙女の様な姿を持つスピカ自身、何をこれから知っていくのか、頓とわからなかった。


 ただ三人この姫の――ここに確かにいる姫の傍にいると、何か硬い、針金のようなもので三人が貫かれていることを漠然と知るだけである。
 それを運命と呼ぶかもしれないし、まやかしだと呼ぶかもしれない。
 スピカは後者だった。隣にいる赤の姫が、しかし、スピカの手をにぎる。


 二人の皮膚の汗が混じり合っているだけだ。二人がお互いの体温を共有しているだけだ。けれどもスピカは手を離すことはしなかった。むしろ強く包み込んだ。スピカはそうしていたかった。


 カーレンはうつむいて、一筋の涙を流し、一滴の雫を聖地に滲ませた。

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第二話
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