姫の眠る場所。姫の御座(おまし)
 プリンセスパレス。




「スーちゃん?」
「わっ」
 スピカは突然カーレンが視界に侵入したことで大声を出す失態を犯した。陽仁は快活に笑った。オーレな嫌味な笑いは、意外にも無く、逆にスピカは恥ずかしかった。
「姉上の所が気になるか?」
「いえ。――ただ、何となく――」
 スピカは城主に向かって愚図愚図した返事しか出せない己を悔いた。隣のカーレンは変わらずにこにこ笑っていた。
「三人には他の姫が揃うまで城でゆっくりしていってもらいたいのだが――」
 陽仁もまた、外に目を向けながら話し始めた。


「実は白の姫の探索に向かっている花火と与一の手助けとして現場に向かって欲しいのだ」
「白の――」
「今二人は、京にいるんだが」


 京は和秦でもひときわ雅な地域で、和秦のあらゆる所が荒くれ者の支配主・統治者であるのに対して、京は優雅な貴族と高貴な血をひく帝の血統が治めている平和な地域だ。
 安房から西に位置している。西に飛んでいった陽姫の珠は白であり、西を司る色は、白である。そして集まった八人の内、二人がスピカとオーレと同じ様に向かった。スピカはその二人の姿をおぼろげに思いだす。

「京ですか。となると『お姫様』にあたるような高貴な女性が幾多もいらっしゃるということになりますね」

 雅の世界が広がる京では、女性はまるで玉や宝石、絹や錦のように大切に育て上げられ、風雅な歌を詠み琴を鳴らし、花の香りも負けるような香を焚き、場の雰囲気を雅に変える笑みを上品に浮かべ、殿方の誰からも求婚されるような理想的な女性にならねばいけないのである。当然そのような女性達は一国の姫でも通るし、現にあらゆる国に養女や妃として求められるのだ。
「だろう。地道に探しているようだ。――今は京でも有数の金山所有の屋敷の用心棒をしているそうだ。そこは女性のみの館で、どうも近頃物騒だからと――三人には帰ってきた早々悪いのだが、二人に協力するため今日に向かってもらいたい」
 そして主人は三人の顔を順々に見て、頭を下げた。三人の答えはオーレが代表して答えた。


「承知致しました。すぐにでも京へ出発いたしましょう」

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