二人の浜辺
スピカはじっと海を見下ろしていた。
深くて蒼く、底なしに見える莫大な水たまりにため息をつき、次に空を見上げた。
空も、爽快ですっきりとした淡い青い光が右にも左にものびて、白くぬりつぶした部分もない。
太陽も元気に活動をしている。
いつのまにか船は止まり、風の島からの乗船客はがやがやと到着地に降りていく。まるで太陽の光に動かされているかのように。
海に背を向け、甲板を通る人々を観察する。
恰幅のいい日焼けした男、旅行に来たような若い男女のグループ、この島――火の島のすぐ隣に位置していた風の島で買い物を済ませてきたような親子。
みんなちらちらとスピカに目を向ける。何やら熱い眼差しを贈ってくれるのだが、当のスピカは虚ろな眼差しを投げ捨てていた。
腰まである、水色とも青色ともつかない色をした、あちこちにはねた巻き髪と、白と黒の丸い髪飾り。細い体。白い肌。聡明な顔立ち、鋭い瞳。閉じた唇。
みんなスピカを女と見ているか男と見ているか知らないが、スピカは男だ。
スピカは実は相当疲れていた。段々、その男からも女からも熱く見つめられる整った顔立ちが非常に陰鬱なものにかわってきた。いいかげん、彼もこの地へ降り立った。
火の島――
彼の最後の目的地だった。