陽姫が十二の珠を放って三十年が過ぎようとしていた。
 スピカは乙女座、智の珠を持っている。
 色のついた四つの星座を残して、八つの星座、面白いことに人道八行がそろったのだ。彼は最後に見つかった。
 残りの四人は女――姫と見当がついていた。八人が四つに分かれ、東西南北を捜し始めたのはつい最近のことだった。


 和秦からずいぶんと離れた南の諸島で、スピカともう一人、獅子座、礼の珠を持つ男は姫をもうかれこれ一ヶ月は捜している。もう一人の男は八人の中で一番年上であったが、スピカにとっては少々気にくわない男である。彼が二手に分かれて捜そうと言ったが、お互いの連絡もままならないこの諸島で、案外あっちが姫をもう見つけ出しているのかもしれない。スピカが放置されているのを、奴はこっそり笑っていることもありうる。


 しかしこれが、奴のスピカに対する計らいなのかもしれない。一ヶ月、スピカを泳がせる。空も海も風も人も匂いも太陽の輝きさえも違う環境で。
 あの日、スピカの腕を放さなかった彼の。

「そんなわけないかあの狸親父が……」

 吐き捨てた。スピカは人でごった返す港に連日の疲れに加えてうんざりし、人気のないところへゆらゆらと歩いていった。

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