鳴滝君は、認めてくれる。
 私の馬鹿みたいな願いを、奇跡を。
 まっすぐに、彼はそれに心を向けてくれる。
 想いが溢れ出て泣きそうになる。彼と、私が彼を好きなことと、ここまで彼と私を繋いだ奇跡に。


「あり……がとう……」


 ございます、とは言えなかった。これ以上口を開ければ醜い嗚咽の声が響き、本当に泣いてしまいそうで。
 俺は、と、鳴滝君が改まって言う。私は彼を見ていたく、屈んだまま見上げた。


「今日一日、すごくすごく楽しかった。
 ――音宮さんといれたから。音宮さんといたから!
 その、志摩子さんと同じこと言ってるみたいだけど、でも本当!
 ずっと、ずっと音宮さんと回りたいなって思って、
 志摩子さんとミツ探してる時も志摩子さんにちょっとムカついちまうほど……」
「私も」
 立ち上がって、彼に言う。きっと、告白みたいに聞こえる。
「私も楽しかったです。――鳴滝君がいてくれたから。
 それに私もミツ君といる時、逢いたいのは鳴滝君なのになあって思って……ふふ」
 二人して密かに抱いた想いに、微笑み合った。


 ああ、私達は大丈夫。
 ふと思ったことがみるみるうちに体中に広がっていく。強い絆になっていく。受験勉強も卒業も、別離すらも辛くないとそれだけで私は断言出来た。きっと彼にも流れるこの想いに私はただ、胸がいっぱいになる。嬉しさとときめきと愛しさと――どこか切なさが盛り込まれた、至福の花束だ。


 彼は手を差し出した。
「後夜祭、一緒に行こう」
 私ははい、と幸せな声で応え、手を取った。




 学校で一番長い日かつ、私達にとって最後の日が幕を閉じていく。
 だけど、私達の日々は、続いていく――。




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