「最初はからかうだけだったんだ。女子高生なんてめったに会わねえもん。それに、無視されると思ったし、子供扱いされるのがオチだし」
「むう……亮くんが結構しつこかったんだよ」
「そうだっけ? ところが無視されないどころか、友達に何かしたいんだ――なんてマジに話されるからおお? ちょっとこれは面白そうだなって思った。恰好の遊びになるんじゃないかってさ」
「ちょおっと、あんたー、黙って聞いてたら、喜備のまごころを!」
 やはり幹飛は抑えきれなくなったらしく勢いよく立ちあがるが美羽に羽交い絞めにされ、じたばた暴れるだけだった。
「悪かったって。でさくっと個人情報調べておびき寄せて遊んだ」
 ここでようやく白い手紙が舞い込む謎が解ける。確かに亮ほどの権力と財力があれば――亮の家のものであって、亮個人のものではないが――喜備の住所を調べだし、喜備の家に手紙を投函することは造作もないことだった。
「……私といて、楽しかった?」
「だーからー、楽しくなかったわけないだろ」
 何を今さら、と苦笑し亮は続けた。
「そうだよ、楽しかったんだ」
「喜備は迷惑そうだったわよ正直」
「それは謝る」
「一言で済ませるつもりぃ?」
「幹飛、もういいじゃない、落ち着こうよ……」
 喜備が宥めてようやく幹飛は席に着く。前と同じような場になった。
「だって亮くんには――今までこうした経験がなかったんだもん」
 ね? と小首を傾げた。突然亮は頬を紅潮させ少し顔を伏せた。と、とにかくと口早になる。
「楽しかった。でも――友達って言い切るのが、怖かった。だって、俺と喜備達とじゃ歳は離れてるし、同性じゃない。
 それに友達なんて――出来ないって、ずっと、思ってたから。
 出来ても、いつか離れていくもんだ。忘れられるなら、離れるなら、寂しいから、いっそ出来ない方がいい。俺は最初から――欲しがってたわけじゃないし。自分の存在すら、否定してたくらいだから、友達に対して否定的な意見や矛盾だって、……あの喜備の言う通りちゃんと、わかってた。
 だけど……本当はずっと、欲しがってたんだろうな。
 ……だっせぇの。……ほんと、ガキだよなぁ……」
 あははと力なく笑って、頭をやるせなく掻いた。


「友達だって、友情だってさ。
 いろいろ批判する奴も文章もある。いない方が、いい時だってあるだろうさ。
 けど本当に友達持ってみないと、わかんねえんだもん。友達の良さとか、実際のところって。なあ」


 まるっと降参だ、と笑いながら両手を上げた。
 喜備は、何度か瞬きをして、同じように笑った。笑いには笑いで、答えたかった。

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