肇輯(トビラに戻る)

○各回じゃんぷ○
第21回 第22回 第23回 第24回 第25回 第26回〜第30回

〜南総里見八犬伝 第三輯〜(岩波文庫第二巻収録)第21回〜第25回

やっとこさ二巻だよ。第20回の終わりにも書きましたが、どうにも書きたがりの性分が顕れちゃって
原典読書が進まないのなんのって。それでいて原典知識はあまり無いって言うんだから困ったもんだ。
八犬伝知己の方と交流していても「やはり私は原典度が足らぬ!」と言う忸怩たる思いに臍を噛む毎日。
だから伏姫屋敷さんの「わりと詳しいあらすじ」をおしごと暇な時にこっそり読んで基礎力つけてる!

【玉梓】受験生か!
【伏姫】しこたま買ってる抄訳とか読めばよろしいですのに。

言うほどしこたま買ってないデス。あと時間がない。まあ、あまり気負いせずにやっていきたいこのコンテンツであります。

○馬琴さま序○
今回もJICC出版完訳二巻の訳に従います。漢文☆読めない☆
その昔震旦にいた行者は衆生を救うのに俗談を以てしたと言う。説くところは勧善懲悪で聞いたものは次第に煩悩を失い無垢の人になったと言う。私も、へたな戯作をなりわいとしているものの、勧懲を説くところは古人にも引けを取らないと言う自負がある。八犬伝もその一つであり、婦人幼児を奨善の境地へ至らせようと言う目的がある。とのこと。
「いまわたしは行きすぎて聖王堯を吠えてしまうことを恐れている」っていう文が何か意味深。
「願わくばまだ目の開けぬ者が、この八犬傳によって一條の光を得、迷いから覚めんことを……」

○巻頭挿絵○
この挿絵たしかめようと思った時に金沢に地震きたから道節許さない。(4/4・午前二時・震度3)
【道節】なんでだよ! 現八もいるじゃねえかよ!
【現八】ははぁこの俺はつまり天才じゃなくて天災なんだな!
【道節】不謹慎なこと言うんじゃねえ!
あーこわかった。ほんとあんなに揺れたのもしかして能登半島沖地震以来かも… 東日本の人は震災以来こんな揺れがしょっちゅうあるんだなあ怖い。それはともかく挿絵確認へ。
一枚目、道節と見八。好きな組み合わせなのにあんまり見ない組。道節三刀流かと思ったw(口に刃咥えているので)見八ちょっとコサック荘助思い出す。二枚目は蟇六と糠助、三枚目は背介と簸上宮六です。二枚目の蟇六が盆栽みたいなの持ってるの気になる。糠助が魚をさばこうとしてる? みたいな感じなのはあれかな、現八の珠は鯛から出たよってことを言いたいのか?


巻之一 第二十一回「額蔵間諜信乃を全す 犬塚懐旧青梅を観る」○
義兄弟の契りを交わした信乃と額蔵のもとにやってきたのは糠助おじちゃんでした。完全に近所のおっちゃんて感じが好感持てるねえ。
「粗忽ながらも信(まこと)ある」 信の犬士のお父さんなんだなあ。わたしの現八も粗忽者な感じで書いてるし(ある程度はねー)
信乃、額蔵は風邪で寝ていると嘘をつく。仮病けびょー。世話する側がそんなんじゃいけねっぺ。てんで糠助大塚家へ報告へ。

亀篠と蟇六ははじめこそ信乃の様子を見てたけど元より愛情なんかないので(農作業も忙しいし)めっきり訪れてませんでした。
あ? 風邪引いただァ? ただでさえ忙しい時だってのに手間かけさせやがってちきしょうめ(意訳)
とうっかり口を滑らした亀篠、何も無かったかのようにホホと微笑む。
蟇六と相談した結果、信乃を引き取るのはまだ早いので額蔵と誰かをとりかえっこプリーズ。
そうして帰ってきたがっくんですがピンピンしておりますた。あるぇ。
額蔵曰く。

(超訳ココカラ)
信乃さんは俺に心を開いてくれなくてチョー冷たいの><
俺から炊事洗濯エトセトラ仕事奪ってやることナッシングでちょーむなしい窓際族ってこういう感じって言うか?
ニート? あっこれニート? 働いたら負け? っていうか負けさせられてるっていうか、
起きてもやることないし寝るしかないみたいな? みたいな? あーそうかー仕事って大事なんだなー、
♪はたらーこー はたらーこー いきてーいーくーとするなーらーって歌もあるし!(ももいろクローバーZ・労働讃歌)

そんなわけで改めてご主人さま方の恩義を感じましたでありやーす(´;ω;`)
というわけで智恵をしぼって仮病使って寝込みましたでありやす!
お願いしますこのお役目外してください(´;ω;`) つらぽよ(´;ω;`)
(超訳ココマデ)

蟇六はそれが一生の智恵かよm9(^Д^)プギャーな態度だが亀篠は額蔵に信乃の様子を聞いてみる。
額蔵曰く、生返事ばっかりで正直全然……でもご主人夫婦以外に頼る人もいないしその内懐いてくるでしょう嫌でも。
でも自分と仲悪いのはこりゃ宿世の讐か気性が合わないんでしょう。ンー特に嫌われることした覚えないんだけどナーナーナー(´ `)
まあそう言うこともあるけど仮病は許さんからな。今回は特別に許すけど。
へえありがとうごぜえますだ! とペコペコぬかづいてがっくん退散。

額蔵の代わりに派遣されてるのは背介さん。ご老人でいても役に立たないから。奴隷人生ぞ哀れ。
信乃は彼にも嫌った素振りを見せるかどうか。もし嫌ってるならそれはそのまま大塚家を警戒してるわけで。
でも、信乃は特に背介さんを嫌うことなくフツーに生活してたヨ。

突然ブレイク。
【額蔵】あのー。ここってツッコミのコーナーですよね?
【玉梓】まあ別にそういう意図がないわけでもない。
【額蔵】気になったんで言わせていただきますけど……
【額蔵】第21回と第22回の分量差ァありすぎ!! です!!
【信乃】高木元先生の「ふみくら」のpdfファイルだと21回14Pに対し22回4Pだしね。
【額蔵】目次とか抜いても10Pですよ! 何ですかこのエピソード配分のチグハグさ。
【伏姫】ちなみに職場でコソーリ読みました♪
【玉梓】仕事しろよ!?

すいません。でも気になったのよ。それにしてもゲストがそのままパーソナリティ化しそうな感じである。

【伏姫】ま、新年度始まりましたからドラマの初回が15分拡大になるみたいな感じで考えればよろしいんじゃないですのん?
【玉梓】変に季節と被せようとするな(-_-;) (ここのページupしたのは2013/04/11)

第三輯初回だからかな、なんて。

本編に戻って。
蟇六わるだくみこしょこしょ。で、亀篠、通りすがりの額蔵に、まあアンタがうっかり口を滑らして信乃の恨みを買ったのはしゃあないとして、アンタは六つ七つの頃からの小者だし信乃よりも可愛げあるわ、あいつにつれなくされても何とか近付いて何かあったらすぐ伝えるんだよ? いいね! と命令。(あ、思えば「合い言葉は勇気」の額蔵さんがスパイだったのってこの辺に由来するのかも…)
それにしても蟇六が毛抜きを持ってたことに何か笑える…鼻毛じゃなくて髭を抜いてたんだが。まあこの時代は今より鼻毛ひどくなさそう。
おまかせアレー!な額蔵。背介さんととりかえっこプリーズ再び。なんか額蔵、亀篠の子供みたいだ。お母さんが子供の付き添いでついてくみたいな。

額蔵のことはよく叱っておいたし心足らないことあったら教えたってな。その方がなんぼいいんかわからんわ。って何で関西弁なんだ。
額蔵もテヘペロ☆ 的な。捨て置かれたのが我慢ならんかったのよ、ご飯だって作らしてくんないし、
でもそれも僻み心だね、許してにゃん☆ みたいなやりとり。
が。これは最初から信乃と額蔵がしたてあげた茶番に過ぎなかった! ハーッハッハー。いや読者にはバレバレですけど。
信乃の方はえーウッソーご飯とか別に自分で出来るからそんな助けの人なんてー、いらないって思ってたってゆーかー、べつにー、そんな悪い風に思ってたってわけでもー、的な感じ。
そんなあからさまなアレですが亀篠はちっとも疑わず。三十五日の逮夜になったらここを後にする流れになりました。浜路もいるから妹にでも「お上さま」にも思えと書いてあるけど「お上さま」ってなんぞ……? 完訳だと「つれあい」ってあるけどつまりは女房とかそういうことかな。そりゃ信乃も苦笑するわな。

三十五日は四日後らしいす。じゃあ番作没してから大体一ヶ月ってことか。
亀篠は安心して背介を連れて出ていく。まさか信乃と額蔵が繋がっているとはこれっぽっちも気付いていないようで。お茶くらい出しますって言ってんのにさっさと帰る辺りが亀篠の情の薄さが透けて見えるよね。

さ、て。

額蔵(きょろきょろ)
信乃「帰った?」
額蔵「もう大丈夫みたいです」
信乃「なら早く入って入って」

信乃に額蔵報告。はぁ全く……な信乃。愛する気ナッシングですからね。一応、たった一人の身内なのにね…んー。るい智のるいみたいだ。
こんな風に身を過ごすなんては〜やんぬるかなやんぬるかな。ま、まあまあ信乃さん。と額蔵、不仲を演出することを提案。その方が安心だしね。油断させられる。

「もしかしたらいつか改心して、心優しくなることもあるかもですよ?」



「でもま、伯母の家に身を寄せるのは父上の遺言でもあるし……運に任せるしかないや」
「信乃さんは頭が良くていらっしゃいますから、臨機応変に避けることが出来ると思いますよ」

ここの額蔵のセリフがいいんだ(*´ `)

「俺も、あなたを守る盾になります。
 笑顔に隠れた刃を、きっと防いでみせます」

その為には……二人の絆は秘密にしなきゃ!

(ほんとは)
(ほんとは、さ)
(俺、すっごく自慢したい)
(こんなに立派な人が兄なんだって、父上と母上の墓に、与四郎に、糠助おじさんに、皆に……)
(あ、伯母さん達には、教えたくないけど)
(俺、ひとりぼっちにならずに済んだ)
(いつか)
(いつかもっとちゃんとした、大人になれたら)
(胸張って言える日が来るのかな)
(秘密になんか、する必要なくなって)
(誰もに認めてもらえるような日が、さ)
(それって、俺が自立する日かな)
(今はまだ、あの大嫌いな伯母さん達に頼らなきゃいけない。悔しい、けど)
(でもいつかきっと)
(……その時まで、俺、ちゃんと生きる)
(生きます)
(うん、もう、死んだりなんてしない)
(生きるよ。父上)

で。三十五日の逮夜の描写、大塚村村民スケッチその3である。この会話交わしてる感じほのぼほっていうか、世間話な感じとかああ、四十九日とかってこんなんだよねー、って感じ。落語の「くやみ」とか思い出したりしてた。なんか蟇六出てきてもバカ騒ぎしてるってか蟇六もネタにされてないかい? ここらへんの描写ホント面白い! 是非是非読んでみてくださいね。
この席で蟇六、信乃を引き取り浜路と婚約させることで大塚家を継がせることを村民の前で約束。この時の証人達はいっぱいいるってことダ。覚えておこう。んで、番作田をちゃっかり自分の田畑にしちゃうのであつた。がめつい。ところで「「南無阿反畝(なむあみたんぼ)で輾(こけ)る」にかなり爆笑したので勝手に第21回で最も輝いていた一句・大賞を授けたいと思います。

んでんで次の日。

「ちょっ、額蔵これ……! なに、さ……」
「信乃さん……」
「見たとおり、ですよ」

そう。まだ一日しか経ってないってーのにいろんなもの持ち出されて売られたりさっさと空家にされてしまう犬塚家に信乃唖然。ああ、でもこういうのぅてあるよねえ。むなしい(´・ω・`) 現代だったらなんだろな、無残に解体業者に壊されていく古家、みたいな図が浮かんでいるよ。
玄関先での信乃の描写が、いい。これは物書きだったらリライトせざるを得ない、そういう欲がムクムクと出てくると思うのだけど…


 忙しく出ていく下人達に、家の埃が舞う。俺が知らなかった埃。そこを動かさなければきっとずっとずっと溜まってて、後で見つけたらきっと雪のようだねなんて、額蔵と笑うことも出来たかもしれない。でも今、その時の微かな残滓達は誰の目に止まることも無く、得てきた形を散らしていた。
 そうしてがらんどうになった家は、もう何も語ることがないように重く口を閉ざしている。
 家が喋ることなんてない。わかってる。でも、昨日まではずっと親しそうに見えた。それは幻なんかじゃなかったはずだ。
 俺の埴生の宿が、俺の知らない間に死んでいた。
 ぶら下がった錠も、折られた枝も、息をしていない。

 もうここは、俺の場所じゃないんだ。
 “わたし”の場所でもない。

 だったら、動き出せばいい。敵も同然の伯母夫婦の家が仕方ないけど俺の居場所だ。何度も覚悟をしたことだ。そうして時を待つ。額蔵と二人で支え合いながら、いつか身を立てる日まで。いつか来るその日まで。
 でもいつか来るその日は、なら、いつ来る?
 今すぐじゃないと、言うのなら。
 今ではないとわかっているのなら。
 俺は誰にでもなくそう心で呟き、口は無音を紡いだ。

 もう少し、ここにいさせて。
 もう少しここに、立っていさせて。


と少々しんみりしましたが執筆トレーニングも兼ねて。
与四郎の墓に如是畜生発菩提心と彫ってなむなむ。

そうして大塚家へとやってきた信乃。浜路の描写あり。人見知りな感じが可愛い。この時の許婚っていう印象が刷りこみのように浜路には入ったんだろうね。でも信乃はちっとも心を許す気なさそうな感じが…(´;ω;`)
ここんところ、浜路口説きとか読んだりしてるのですが(第27回読んでるとこです)浜路の話も考えなくちゃねえ。浜路と信乃を繋ぐパイプ役は額蔵になりそう…漱石の「こころ」の先生みたいにさ……そ、そうなると信乃K? 御嬢さんを私に下さいを言うのが額蔵? もっと早くに死ぬべきだったのに何故今まで生きてきたのだろうって信乃が言うの? いや書くの遺書に…? …それどこの伏姫……!

ええと横道にそれた。一つ屋根の下で暮らしてて、一応許婚でもあったんだから、妹以上の気持ちはあったと思うんだよ……と言うか、思わせてくれよ……それに気付けなかっただけなんだよ……
「ふと 気付けば あなたはいない 思い出だけを残して」by KOKIA「ありがとう」なんだよ…… でも、でもさ……はあ。切な。つらぽよ。

……かくて三伏の夏過ぎて。親の忌も明け、信乃、男姿になりました。まだ11なのに14〜5に見えるって相当発育良いな(女装似合わなかったろうな……似合わない女装は私の萌えポイントだけど)ついでに元服だ元服だお赤飯だとやってたら村民は「おっちゃんとやってんじゃん」と騙されていく。

そして一周忌。はやーい。額蔵と一緒にお寺に詣でたその帰りですよ。
八房の梅のシーンだよーー! ここ名シーンよォー!

「与四郎を埋めたんだし、ここは四房になるべき、なんだけどなあ」
 そう分析しながらも額蔵と二人、そんな珍しい梅を見て興奮していたのは言うまでもない。じっくり一粒ずつ検分し、すぐに気付いたことがその興奮を更に高めていく。
「見てよ額蔵、これ、この梅」
 何です、と覗き込んだ額蔵もすぐに気付いたようだ。
「字……?」
「ほら、孝に、義」
 他にも、と信乃は一粒一粒を掌に転がした。彼らが背負う孝と義の他に浮かぶのは仁、礼、智、忠に信に悌。人が守るべき八つの徳のそれぞれである。仁義八行、人道八行とも呼ばれる高徳を浮かばせた梅に二人、顔を見合わせる。しばしの沈黙は興奮を鎮め、鳥肌を立たせること容易だった。再び梅に視線を向ける。
 実が八つもついているせいか、普通の梅よりも小振りである。文字のこともあるがその大きさの故、余計に信乃達が持つ珠に酷似していた。事実、額蔵が似ていますと守り袋から取り出して見せたから信乃もその相似性に気づけたのだ。
「今までこんな梅、成ったことなかったのに」
 小さな産毛の生えた梅の表面はすべすべとしていて心地よいが、信乃の疑念は晴れない。
「与四郎を埋めてから、どうして……」
「信乃さんの珠が与四郎から出てきたから、とかですかね」
 養分になったとか? と二人微笑み合う。それからまた穏やかな沈黙が訪れた。綺麗ですね、そう言いながらすうと青梅の香りを体に吸い込む額蔵の隣で、信乃はまだその珠と梅を転がしていた。
 春の薫風が信乃の髪と梅の梢を揺らしていく。
「ねえ額蔵」
 もしかしたらだけど、と宿世の兄弟であろう、かけがえのない友人たる少年を見つめた。
「この珠、この八つの梅みたいに、元は八つだったんじゃないかな」
 それか、と珠にある紐通しの穴をちらと見る。
「例えば、数珠だった、とか」
「数珠……百八つだからですか? その内の」
「うん、多分大玉かな、その八つの内の二つが、俺と額蔵が持ってるものなんだ」
 それはあくまでも信乃が何となく思った仮説に過ぎなかったが、言葉にした途端、真理であるかのように思えてきた。殆ど天啓のようにも思われてきた。
「八つだったものが、どうしてここにあるかはわからないけど」
 梅や珠に聞いたところで教えてくれるはずもない。何かあるんだったら、いつかその理由がわかるかもだよね、と微笑む。母から聞いた話では神女か山媛かが授けてくれたものらしいから、ただの数珠の珠ではあるまい。何か遠大な謂われのある珠なのだろう。

 信乃と額蔵が出逢ったことも、ただの偶然では決してない。
 あのさ、額蔵。そう言いぎゅっと一度、珠を握る。

「俺達みたいに、この珠を持っている人が、どこかにいるかも知れないよね」
 何かに縋るように、何かに願うように。
 そうした様子を額蔵は優しく見つめていた。うん、と頷く。
「牡丹のような痣も、あるかもしれませんね」
 信乃もまた、うん、と頷く。
「会って、みたいな」
 ころころ、他の六つの梅を遊ばせるように転がしながら信乃は嘆息と共に呟いた。つん、と一つずつ愛情を持って小突いていく。村の童達が兄弟同士仲良く遊んだり喧嘩したりするように。
 きっと、とそんな幻を脳裏に描き、慈愛を込めて言葉を次ぐ。
「きっと、その人達と俺達、兄弟になれるんじゃないかな?」
 その声は信乃自身、内心驚いてしまう程明るかった。信乃がそうなのだから額蔵も言わずもがなで、微かな笑みと共に彼は目を丸くする。
「こう思うのは、さすがに勝手過ぎるかな? 迷惑かな?」

(以上 小説「蒼天に吠える獅子」より抜粋)

【玉梓】……ラクしたな。
【信乃】引用長いし。
【伏姫】小説を読ませようとするあざとさが見え見えで萎えですわ。

だってここ結構原典に沿って書いてたから……あとここは小説サイトです!キリィッ
それとぴんく先生作詞の「夢をひとつずつ」思い出す。あれは本当に名曲だよなあ。

【額蔵】あっあとこんなネタもあります。
【信乃】額蔵の方からそのネタ引っ張るんだ……
【額蔵】す、すいません。ここのぺえじでは俺主役のネタでの出現率が少ないんでつい…

んで「この梅熟するに至りて八行の文字消える」ってあるけど、これもしかして遠大な伏線だったのかな。
ほら、犬士の珠の文字消えるから… 字が出たのは最初だけで後は、って言うのも二世犬士達のことみたいだし。
八房の梅として知られ与四郎のことも知られるようになったけど火事で焼けちゃった、残ったのは猫又橋だけだった、って言うのも、なんかフシギだね……

【信乃】! 閃いた!
【玉梓】お前の閃きにはロクなもんがない。
【信乃】ホラ、薄○鬼とかうた○リみたいに華の舞とかパキラとかアニメイトカフェとかナンジャタウンみたいなので居酒屋と八犬伝がフェア組むとしたらさ。
【玉梓】そこはやはり「八剣伝」でやるんじゃろうな……
【信乃】『八房の梅酒』ってメニューが絶対! 出来ると思う!!(迫真)
【伏姫】あらぁ〜! いいですわねそれ! コースターが仁義八行の珠をイメージしてて! そのうちどれか一枚プレゼントみたいな、で!
【額蔵】お酒の中に梅が一粒入ってて、それにも仁義八行浮かんでるんですよね〜!
【信乃】同じ玉なら白玉あんみつとかフルーツポンチみたいなのでも珠モチーフ出すのもありかも!
【玉梓】ウアアアやめろ! 具体案を出す度に実現できないと思い知らされてむなしくなるからこれ以上はやめろ!!

というわけで以上、第21回第三輯スタートだよ十五分拡大編でした。

【玉梓】本当にドラマ初回扱いか? これラジオ番組のノリじゃないのか?
【伏姫】一輯は大体十話入りですから、やっぱりドラマですかも♪
【信乃】てことは輯の終わりも十五分拡大な流れが来る。たぶん。
(以上2013/4/11迄)

巻之一 第二十二回「浜路窈に親族を悼む 糠助病みて其子を思ふ」○
こうして一周忌も済ませた信乃は改めて大塚家へ。番作田も蟇六亀篠に横領されちゃった、しょぼーん。
信乃のこの危ない状況を「石の下に生成す鶏卵(たまご)薪に巣籠もる雛禽(ひなどり)」と喩えている。この比喩素晴らしいと思った。対句っぽいのも好き。
だがしかし! 信乃はそんじょそこらの子供とはわけが違うのよ! 片時も心許さず、村雨丸を守っておりました。
なので、蟇六も慎重にならざるを得ない。下手なことしたら計画がパァなわけですし。
で、ここで発想の転換と言いますか。村雨丸もその所持者もここにある/いるっちゅーことは、これ今は俺のもんじゃなくてもいつかは俺のもんになるってことじゃないかしら?
“遠く謀れば長く利あり、短慮は功を成し難し”
ってことで、盗むのは様子見! 信乃の意中は額蔵に探らせればいいんだし。
ま、読者にはわかってることだけど、額蔵は信乃サイドの人間なので大塚夫婦には適当に言い繕って、信乃の悪口を言ったりして油断させといて、信乃には有力な情報を流す、という。うっしっし越後屋おぬしもワルよのお(方向が全く違う)

そうして……年月は流れて……
文明も九年になりまして!

【玉梓】はや!?
【伏姫】あらぁ、突然の時間跳躍は朝ドラや大河にはつきものですわよ?
【玉梓】狙ってるの? 大河狙ってるの!?
それよりも人形劇のリメイクをだな。

信乃、十八歳。浜路十六歳。ついでに言うと額蔵十九歳。御似合いカップルだったとか。
はよ結婚しろし〜結婚マダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン とせかす村民。大塚夫婦の方は迷惑がってるわけで。
今更信乃を始末しようとしたところで、双葉の頃に詰まなければ遂に斧を使うしかないって喩えそのままに立派に成長してる信乃を今更片付けることは出来ない……あ〜〜何で浜路の婿になんて言ったんだろくやし〜〜〜!
……ってゆー時に、勃発したのが練馬の合戦であることよ!
亀篠蟇六はしめしめとばかりにこれを理由にして祝言を遠ざけたのでござーい。

えー練馬の合戦についてざっくり書こうと思うのだけど…
武蔵国豊嶋郡豊嶋の領主・豊嶋勘解由佐衞門尉、平信盛(八犬伝辞書pro便利だー)
「させる大名」ではないけど数郷を管領してる(志村・十条・尾久・神宮等)
その弟、煉馬平佐衛門倍盛(煉馬の舘にいる)
このほか、平塚・圓塚の一族もいて、「栄めでたき」旧家である。
で、この兄弟は初めこそ両管領に従ってたけど、どうも恨みを持ったようで最近は胡越の思いをなしているとのこと。……うーんつまり疎遠になってるってことかね。
で、そんななか、管領山内家の老臣たる長尾判官平景春が両管領に対し自立の志があったと。
つまり独立だ、敵対だ。信盛もそれに同意していよいよ管領に逆らわず!なことになったと。
で。山内と扇谷の両管領はこっそり軍議を重ねてて、敵の勢いが小さい内に先に豊嶋を叩いとこうZ!ということになりまして。
それで文明九年の卯月十三日に合戦が起こったのね。

【信乃】……ジェイソンじゃん(4月13日金曜日)
【額蔵】あっ! ほんとだ!
さすがに曜日はないけど。

まあここからの合戦描写は原典見ていただくことにして〜 豊嶋方はすっかり油断しててすぐに一族結集したしそこそこ善戦したけど戦の用意なんてぜーんぜんしてなかったから兵糧ははや尽きて相手方にフルボッコにされちゃいました。
以上、ざっくり書くならこんな感じ。原文引用するなら

「憐むべし、豊嶋・煉馬の両大将、一朝の怨みによりて、強弱の勢いをはからず、
 一族郎党、数をつくして、旧家忽ちに亡びにけり」

こんな物騒なことがあったわけでして菅菰・大塚の里まで人の心は穏やかじゃなかったんだって。なるほど、こんな状況で祝言なんかやれないよね。規模は違うだろうけど東日本大震災後の自粛ムードみたいなものだろうか。
池袋とか江古田とか、実際に東京23区辺りの地名が出てきて実にわくわくするね。まさしく活動拠点よ東京都♪ よーしみんな聖地巡礼だ!(何かが違う)

で、浜路の描写であります。信乃を一途に慕うコイスルオトメであることがはっきり書かれています。
あっ、コイスルオトメと言えば大塚組でいきものがかりやりたい。というのもきよえちゃんはよっち・ほっち共通の知人の妹だから…
それはいいとしてここの挿絵好きだな。しのはましのはま。

浜路のキャラ設定と言うか、八愛における浜路のコンセプトはこの辺りをじっくり読んで仕上げる予定であります。
最近は浜路のことよく考えてる。考えれば考える程切ない。
浜路は年十二、三の頃に自分が大塚家の実の娘ではないことを知ったのでした。本当の親は煉馬の家臣の某と言う人……
誰が教えてくれたんだろう。わたしは背介さんじゃないかなと思っているんだが。ぴんく先生の描写は上手くて、使用人の会話を浜路が偶然聞いて知ったっていう感じにしてる。うーこれ私もこうしたかったな。
なるほど、それで父母は小さい頃、誰かが見ているところでは可愛がってくれたけれど、誰も見ていないところでは、取るに足らないことについてねちねち言ったり、撫でるふりをして抓られたりしたのだわ……。
小さい頃の話らしいしこの頃はもうそういう虐待はなかったみたいだが。八愛ではこの辺りもっと脚色ありで採用出来たらなー。

前も書いたけど、信乃と張り合う為に貰われてきたいわば、大塚夫婦の見栄の為の道具に過ぎない浜路だから……
……可哀想だな……(´・ ・`)
それでも頼る人はおらんし(その頃はまだ信乃には頼れなかっただろうし)
虐待されても父母に頼らんなんかったんやろうなって思うと、浜路の魂はどれだけ傷ついたのだろう……切ない。
この浜路の孤独はやっぱり信乃のそれと通じるところがあると思うのね。どこかで響き合ってる気がする。川村氏も著書で似たようなこと書いてたと思うけど。

本編にもどーる。
で、浜路はその教えてもらった時から密かにその実家の父母やきょうだいを慕ってきたわけだけど、
そんな中でこの合戦ですよ。気が気じゃないよね。

(……お父様、お母様)
(……お兄さま、それとも、弟……?)
(お姉さま、妹……?)
(みんな、みんな)
(どうかお願い。無事でいて……!)
(……こんな、こんな大事なこともわからないなんて)

“係る宿世の悪報”か…… これ伏姫の時にも出てきた。

かよわきをとめの浜路には頼れる相手はおらず。そう、信乃以外にはね。
部屋にいる信乃(訓閲集っての読んでるらしい、なんか意味あるの?)に頼ろうとする……ッけど亀篠が来て慌てて逃げ!
亀篠の方は糠助おじさんの危篤を告げに来たのでした。しかし「貧人に親めば徳はえつかず」ってひどくね? あと馬琴さま、「いかなる事を言い遺せる」って書いてるんですけど、もう第二十二回のタイトルで既にネタバレてる…… まあ、八犬伝ではよくあることだけどね。

さて、あくまでも原典に忠実であらんとすると、信乃と浜路の接点のなさが本当にすごいのである。浜路が一方的に思っていただけでね。そら浜路口説きも唐突過ぎて信乃は戸惑うって。なんだよ、押しかけ女房ヒロインか、一昔前のアニメかラノベか。
でもそれは逆に、読者に想像の余地を与えてくれてるのかな、なんて。
みんな浜路口説きに至るまでを想像したから、現在の信乃と浜路=八犬伝の代表カップルっていうのがあるんじゃないかな。
だから八愛でも独自の設定を拵えるつもりなのです。信乃と荘助の髪結びの帯(浜路リボン)とか既にそうだしね。
てことで第22回この辺で。
(以上2013/4/30迄)

巻之二 第二十三回「犬塚義遺託を諾く 網乾漫歌曲を売る」○
糠助危篤の報を受け、信乃は彼の家へ向かいます。大塚夫婦に気を許してなかったように、他の村人にもスキを見せないでいた信乃ですが糠助にだけは別。大塚夫婦もそれは認めていた、古い馴染みだからということもあるけれど、何よりヴァカだったからだ。

【玉梓】公式で馬鹿設定か…
【伏姫】勿論ただのヴァカじゃないみたいですけどね!

ところで「他の村人にもスキを見せないでいた」と書いたけど原文はこんな→「里人などには、親しくも物いはず」
ってことは信乃は村民には当たり悪かったってことなん? めんどくさい奴だな。そのわりに村人からの信頼厚かったり好かれたりしてるのは矛盾してる気もするが。ま、番作の遺児だし嫌われ者の村長風に対する村民側の象徴として見られてたんだろう。
話を戻して。信乃の方も、その愚かだけど「仁にちかき」――真心溢れる人柄を愛し、
よく彼のもとを訪れては何かと世話を焼いていたのです。

【信乃】ねえあのさ、思ったんだけどさ。
【信乃】糠助さんは「仁にちかき」人だったんだよ。てことはさ、その子供である現八も「仁にちかき」人、になるんじゃないかな。
【額蔵】つまり親兵衛に近い犬士は現八さんであると?
【信乃】うん。

ここのところ現八の特異性が(あくまでも私の中でだけど)よく話題になっていて、
親兵衛との共通点と現八の特異性をあげると、ここには何か意味を見出さなくてはいけないんではと思うわけである。
隠微がないわけないんじゃ…と思うの。(ところで現八(信)と最も縁遠い毛野(智)と結びつけたるい智はやはり異色作だな。まあ何でも八犬伝フィルターかけて見るのはいかんが)

と、寄り道したので戻す。糠助さんの女房(再婚してたのね当然か)も去年の秋に亡くなってたのん。
さてたびたび登場する犬士らの所持金に関する記述だけど読んだ限りではここで初めて登場。番作のへそく……もとい遺産である。
十両あって、三両は番作の葬式資金に、もう一両は逮夜のドンチャン騒ぎに使って、あとの六両は信乃がまだ持ってていざって時に使おうと言うことなんだけど、まだないんかって訊いてきた亀蟇ががめついってかあさましくてうわぁ…だよ ホントに読んでる時そんな気分になったよ(´・ ・`;)
で、その六両のうち一両を糠助さんに渡したんだっぺ。

【信乃】もしかしてこの原典めもで俺らの所持金を逐一明らかにしていくつもりなの…?
【額蔵】別に誰も欲しくない情報ですよね…?

信乃は大塚家に引き取られてからお小遣いとかもらってなかったけど(番作田も奪われたしね)
信乃はっていうか犬士達って基本贅沢しない子達なので特に不自由はしなかった。……でもせめて信乃はもう何着か着物買った方がよかったんじゃないかなと思うのね? もうユニクロとかでいいから!
話がなんか逸れたけど、糠助は与四郎とのこともあったしピンチは救わねばだ。てことでこっそりお金を贈って糠助夫妻も喜んだのだけど奥さんは看病の甲斐もなく亡くなってしまったんです…
糠助は奥さんももういないし、親族もいないし、財産もないし、まさしく身一つで死んでいけて心安らかなわけであるけど、
こんな彼にも一つ、心残りがあった……

どどどどどどど……
【玉梓】……何か、不穏な地響きが聞こえる。
【??】でりゃーーーーーーーーい!!!

(ばっかーーーん! 壁破壊!!)

【一同】うわーーっ!? 誰っ!?
【信乃】いや……来るとは思ってたけど。
【玄吉】サプライズゲースト! 玄吉こと犬飼現八だZ!
【玉梓】壁を蹴破ってくるなー! お前はちりとてちんの草々かー!
【伏姫】これくらい元気がある方がいいじゃないですかー♪
【額蔵】何か最近現八さんのバカ感に拍車がかかってる気がするんですよね。大丈夫でしょうか。
【信乃】現八ファンは幻滅しちゃうよね……
【玄吉】あっなんか俺のわるぐちー(・з・)

さて糠助の語る過去ですが……
【玄吉】詳細は小説「蒼天を駆ける獅子」を読んでくれな!
【玉梓】投げたー!
【信乃】また宣伝だー!

まあそれはあまりにも投げ過ぎなので簡単に。
現八いえ玄吉は安房生まれしかも洲崎の近く。しかし産後の肥立ち悪く必死に看病したけどもお母さんは亡くなってしまい、残ったのは乳呑児と糠助ただ一人。財産もない、ものはあらかた売りつくしてしまったと……このままでは餓死を待つばかり。
そんな苦しみの果て、とうとう役行者の禁漁区で父(糠助)は密漁と言う罪を犯した。故に安房を追放されたのである…… 死罪になるところだったけど伏姫と五十子の三回忌の大赦があって追放になったわけだけど、ここも何と言うか因縁というか。
なんかさ、楽園を追われた神の子って感じがするの。あるいは高天原を追い出されたスサノオって感じ。出自や生い立ちを見ると犬士の中では賤の極みにいる現八なんだけど、陰中の陽……のことば通り、それ故の光があるように思う。

で、父と子二人で心中しようとしてたところに、後の現八の義父・犬飼見兵衞が通りかかって玄吉を引き取るのである。名前は告げなかったけどお弁当とお金をわけてもらったりして。この時見兵衞が里見に行こうとしてたっていうのがものすごい偶然よね。
そうこうするうち糠助はここ大塚に知り合いを頼って辿り着き、籾七(←「糠」と縁づけてる名前なのかな)という人が亡くなった後その妻の入り婿になって、まあ貧乏だけどただ正直を心掛け、役小角に手を合わせ己の罪業を詫び続けた。
それも全て、残された玄吉の為。つつがなく、人並みの子に成長していけるように……
【玄吉】おやじさま……(´;ω;`) ホロリ

玄吉を貰っていった見兵衞は成氏配下(古河殿)の武士らしい。今も下総千葉にいるかもしれない。(※成氏この頃千葉の城にいたとか)
そこで信乃が古河へ行くことがあれば玄吉を尋ねてくれないかと。
右の頬先に牡丹のような、痣。
信の字の浮かんだ珠。

――まぎれもない、
――あの八房の梅が示した、義兄弟。
――その一人。

「自分と当てはまるところがある」と信乃。必ず玄吉を尋ねることを約束する。糠助も信乃に託したことで思い残りもなくなったようです。

【信乃】なんかさーホントよく出来てるよねー。フィクションなんだから当たり前なのかも知れないけどさ、でもフィクションだからって理由がうすっぺらく思える程、俺と現八の出逢いって運命的。じゃない?
【玄吉】だなぁ〜。

探してくれと頼まれたその人が、宿世の兄弟と言う一方で、(小説でも表現したけど)信乃を「殺す唯一の人」でもあって、と言う。かー、燃えますなあ、燃えますなあ。
芳流閣ってさ、その舞台の見栄えの良さもあるけど、こういう人間関係が裏に隠されてるところも燃えを掻き立てる要素の一つだよね。

【額蔵】それに、良かったですよね
【玄吉】んにゃ?
【額蔵】糠助さんはずっと現八さんのことを気がかりに思っていたんですよ。
【額蔵】たとえ人から愚かだと言われても、忘れずに、ずっと。ちゃんと育ってくれますようにって。
【信乃】そそ。立派な人に育ったし。ちょっとバカだけどいい奴だし。
【玄吉】言ったなこいつぅ〜
【信乃】いてて。……でも心底思うよ。現八と兄弟で、よかった!
【額蔵】俺もです!
【玄吉】おめーら……ちきしょう、泣かせやがって。・゚・(ノД`)・゚・。

【玉梓・伏姫】はいはいホモホモ。

【額蔵】わーーー感涙の場面ぶちこわしーー!!??
【信乃】鬼だ! 悪魔だ!
【玉梓】怨霊だし。
【伏姫】姫神だし♪
【玄吉】わはははー^▽^

で、額蔵にも話して。「この身がままになるのなら今すぐにでも逢いに行くのになあ」って言う額蔵可愛すぎて。
このことを信乃に話して安心したのか、糠助は翌日息を引き取ったのでした。残ってたお金と田畑は道場に寄進して糠助夫婦の香花料に。この信乃の手配に村人、はやく荘官変われかしと思う。

えーと、第23回後半。ハイ!ハイ!ついに網乾登場だよーん(・∀・)!!
キャラデザ一応してみました。ネタとかには出さないけどね。オールバックがいいなあと思ってたのでこういう髪型です。


てか網乾と私(数字だけ見れば)同い年なんだよね(・ω・)!(数えだから網乾の方が私より年下だろうけど)
浜路は16歳……25歳と16歳……うーん、あーりんと私か(おい 犯罪臭……かな。少し。
いや、九歳差ならセフセフ? 年の差おいしい。多分身長差もあるだろうし。

【玉梓】今回もまたどーでもいいことに尺を取り過ぎておるぞ。
【伏姫】じゃ、まきまきで行きましょー♪

えーはい。みんな大好き? 網乾登場です。もとは扇谷定正に仕えていたけど告げ口が多くて人を失脚させてたから、強訴によってそれらが明るみに出て追放されちゃって。遠縁の人を頼ってここ大塚に、んで糠助の家を買ってそこに住むようになったと。なんかね、ここらへんの記述見ると山下定包にそっくりなのよね。定包がもし左遷されてたら、みたいな。THE八犬伝では同一人物のようにされてたっけ。
文字は勿論遊芸も一通り完璧に出来るさもちゃん。番作没後はこういう師匠的存在がいなかったので手習いの先生としておさまりました。「手跡」の師匠だから書道とかかな。女の子には舞踊も教えたり。で、こーゆーしゃれたものって田舎も都会も変わらずに持て囃されるから網乾の人気は一気に上昇。あの子やらあのご婦人やらと浮き名が立ちますが亀篠は昔からこういう芸事や華美なものが好きなわけで、蟇六にもとりなして網乾をウザがる人がいても蟇六は網乾を追い出さなかったよーっと。

んで。代官の簸上蛇太夫(←すごいアレな名前だな)の後を継いだ簸上宮六が新代官になりました。で、その挨拶周りのドンチャン?と庚申の日がぶつかってなるほどオールである。カラオケだな。浜路はいやいやながら華美な服着させられてお酌したり琴を弾いたり。かあいそす(´・ω・`) こんなことして、信乃さまはどう思うか…
宮六は完全にセクハラじじいみたいな感じだし。普通にきもちわるい。やだ…この陣代どんだけ浜路べた褒めしてんのよ… 「玄賓僧都も聴聞せば堕落せん」「妙音天女も合奏せば撥を投ん」 きもいわー ちなみにここらへんの様子はこないだ上演されたM&Oplaysの八犬伝がとてもよく描写してた。飲み会のノリ。
あと網乾は何か幇間みたいなんだよね、太鼓持ち。あーでも男芸者っていかにも網乾って感じだな。で、どんちゃん騒ぎに加わらず兵書読んでる信乃のコミュ障ぶりを君は見ただろうか… いやごめんね、教室の隅で一人で読書してる感じだなって思っちゃったんだ。

網乾、浜路に懸想するのこと。でも浜路はえんがちょな感じ〜なの。
で、前も書いたけど原典の表記に従うなら、ホンットに浜路と信乃ってほとんど喋ったこともない的な。一方的に想ってる的な。そりゃそんな相手からいきなり口説かれたらびびるわなぁ。でもさ、やっぱしのはま正義って思いたいじゃない。
浜路はほんと、泥中の蓮みたいな感じで、一途な乙女過ぎて泣ける。信乃さま以外見向きもしない。だから網乾びいきの亀篠にはうんざりしてるのだった(´・ω・`) 亀篠の方は網乾を婿にしようって思ってるわけだから浜路ますます憐れよ。。。
というわけで第23回。いやー今回もそこそこ長かったですね。はいすいません。これでものんびりやってる方。
(以上2013/05/05迄)

巻之二 第二十四回「軍木媒して荘官に説く 蟇六偽りて神宮に漁す」○
陣代・宮六は浜路にメロメロリンコキューン(謎) それを察した軍木は「YOU嫁にもらっちゃいなYO!」(こんなにくだけてないです)ニシシとけしかけ、さっそく蟇六のもとへ話をしに。
蟇六、こりゃ願ってもないこと! だけどまず信乃を片づけてから……と返事しますが(こんとき「(信乃と結婚するのは)浜路の願いではない」って言うのにイラッ。残酷ぅ…)「そっちも嫁にやりたいゆうてんねんなら返事してからでもおそないやん返事もらえないとこっちが困るんスよねェ〜」と脅して言質をゲット。ただしナイミツニナ!(c)平清盛
じゃこれ婚礼の目録ね〜と品を運んでくるこのプレッシャー怖い。ワンクリック詐欺か。

亀篠がやったじゃないのアンタ、てばりに出てくる。蟇六、品物をバレないように隠す。ここの掛詞が大変リズミカルでよろしい。母がひそかによろこんぶの。まあとにかくいろいろ金かかってるものが贈られてて今更断るとは言わせねーぞオーラが出てますねこわい。ちなみにここらへんは大阪で読んでました。
この作業してる間は使用人たちはお昼寝中(出来るんだな)浜路は洗い衣の皺とり作業、信乃は菩提院へ参詣、で額蔵は(完訳より引用→)「ただ額蔵ひとりが客座敷のつぎの間で、単衣の襟をひらきながら蚤をひねっていた」ってあって、なんか仕事しろよと思ったのだが、愚か者をわざと演出してるのかもしれない。

亀蟇夫婦、夜の相談inふとん(なんかエロい)
網乾が帰参するのを狙って浜路といい仲になるのを待ってたわけだけど、また召し抱えられるかどうかも定かでない奴より目に見える権力がはっきりしてる方がイイ。チッ、こうなるとわかっていれば網乾に入れ込んだりしんかったのに。
蟇六曰く、浜路は今時珍しい馬鹿正直な子。信乃さまひとすじ!
……っていいじゃないの。好きな人に全力になる全力少女。しかし、今の女子に似げもなくってことは、昔も貞女は珍しかったってことなんかね。室町がそうなのか江戸がそうなのか、女子はいつも浮気症ってことなん。
あるいは貞女なんて観念だけのもんで、ないものねだり画中の餅だったのかな。
なんか八犬伝て儒教色強いように見せかけて老荘思想もコインの裏表のように強くあるんじゃないかと感じる昨今です。

話に戻ろう。何か網乾にひかれてるとこある? と聞くと亀篠は去年糠助危篤の折の、信乃の部屋へ行こうとした浜路を告げ口。

【伏姫】ねえねえ、この「已前には野合しか」って〜「野合」って〜!
【玉梓】……(-_-;)
【伏姫】あっヤダ〜〜☆ ここから先は清純バージン伏ちゃんが言えるわけないじゃないですかー><♪ ビッチが言うセリフですわよほらほらほらほら〜
【玉梓】でええええええいふざっけんなゴルァァッァア!!!

ま、まあ……何かその、いやらしいことを考えてしまうんだな、新編八犬伝みたいな<●><●> アオカン! アオカン!
……ってそんなところまで意味してないんだろうな。こっそり会ってたとかそんな感じなんだろうな……。。。
とにもかくにも邪魔者は信乃ただ一人。あ〜村人の前であんな約束すんじゃなかったべ。
って何気なく書いたけど、そうだ……ここにも口の咎……か? 蟇六は君子ちゃうけど。

妙案浮かばんかね〜〜〜〜…………ノビビビーーン! ひらめいた!(c)ドラえもん 九つって落語の時そばくらいの時間だよね。深夜零時くらい? がばっと起き上がり蟇六は亀篠にその妙計を教えます。
ま、このメモにわざわざ書くまでもないけど信乃の村雨丸をすり替えて許我へおっぱらって道中で額蔵に殺させる大作戦ね。後で出てくるけど額蔵が失敗しても許我城下入ればアウトだしね。
村雨もこっち手に入るし一石二鳥ウマウマ。網乾が何か言ってきても陣代に浜路をやれば何とか出来るこっちのもんやしウマウマ。

翌日、亀篠さもちゃんちへ。話すのは勿論あの計画についてDA。それはいいけど浜路は自分に靡いてないっスよ? オホホホ……な亀篠、信乃さえいなくなったら浜路の心なんてさもちゃん次第YO!YO!とけしかけけしかけ。
網乾は了承。アレコレひそひそ話して首尾はととのったZ!

で、信乃を呼び出し古河へ行きんしゃいの話。信乃は額蔵から情報が伝わってるので、自分を追い出して浜路を陣代の嫁にやろうってんだな、とは読めていた。ま、とりあえずいい顔しておいて返事して喜ばせておく。
で問題のシーンはここからである。ところで草木に水やる荘助かわいい。

「女子は全て水性にて、よるにもはやく、移るに早かり」
「某こゝにをらずならば、親のこゝろに従ふなるべし」
「大丈夫たらんもの、恋憐として一女子に、生涯を愆れんや。再び得がたきものは時なり」
「只うち捨ててゆかんのみ」


 何の気なしに言ったようなその人の顔を、俺は多分一生忘れない。
 ああ、そうか。
 この人にとって――
 あの方はその程度でしかないんだ。(・・・・・・・・・・・・・・)
 大事な人であるその人。同じように大事であるあの方。
 俺は、俺には、どっちを選べばいいのか、わからなくて。
 だけど。
 針が示す先は、僅かに。
「ああ、そう、ですか」
 あの方の方に、逸れていて。
「そういうことも、あるかもしれません」
 俺の声はどこまでも冷たかった。その人は返事をしなかった。俺も何も言わずその場を離れた。一緒の場所にいたくなかった。その時ばかりは、その時ばかりは普段装っている不仲がありがたかった。
 そして「もしも本当にそうであったなら」と、強く思った。強く希求した。それが俺なりの憎しみの形だった。大切な兄弟に向けられるそれはひどく歪んだものだったけど、どうしてかとても得難い何か美しいもののようにも思えた。
 とにもかくにも、その人に対してそんな風に思ったのは、その時が最初で最後だった。
 多分、きっと。


【額蔵】……えっと……何ですかこのねつ造文章は……。
【信乃】いや、うん。第二輯のゝ大様公開処刑があったから何となく予想はしてるんだけどさ……。つまりあれだろ? 今回は俺が伏姫サンダーを喰らうわけでしょ…?
【額蔵】悲観的なのはいけませんよ信乃さん! いや行間をどう読んでもいいですけど、今更ですけど、二百年前の文章ですし? でも別に俺は信乃さんにこんな風に感じていたわけじゃ……!
【信乃】いいんだよ荘助。素直に言っちゃいなよ。お前は俺をひどいって思ったんだろ。俺だって思ってるし。
【信乃】浜路だって一回ゲストに出たきり出てこないし……。俺は、皆に嫌われる宿命なんだ。
【額蔵】信乃さん、そんな……そんなことないですっ!!
【伏姫・玉梓】はいはいホモホモ。
【額蔵・信乃】結局それかい!!!
【額蔵】しかもなんか序の口で切った感じしますし!
【伏姫】ごめんなさいまだ第24回なのにいい加減冗長になり過ぎてるので適当に切りましたの(^O^)

まあそんなわけで問題のシーンでした。「あとのことを考えると浜路殿に怨みが残るのでは、と心配です」 ここらへんをネタにして「オーマイゴースト! 〜わたしが怨霊になっても〜」とか言うしょうもない同人誌作りたい。曲イメージイラストでもいいな。
しっかしこ、この一連のシーン読むだけでふつふつ怒りが… ああ!ああ!信乃むかつく!むかつく!!
個人的には善人グループの中では金碗八郎孝吉の次にムカつく!!! 冷たい奴! 酷い奴! ひとでなしろくでなし腐ったリンゴ!! みなさん八犬伝の信乃はこんなにひどいやつなんですよ騙されないでくださいね別に美形描写もないですからね最悪ですからね!!!!
ふう……集中砲火終わり……。ああでもしかし、はらわたが煮えくりかえる……!! って本気だな私も。浜路シンパなんだなあ。
で、この後の浜路の、たった数行だけど信乃の着物縫う描写が……泣けるう(´; ;`)

そんで弁財天へお参りしまっしとのことで、参った帰りに蟇六と網乾と背介さんと遭遇。もう遅いのに漁に出る蟇六。自分の為に魚を捕るってんだから邪険に出来ない信乃。
が! しかしこれは蟇六の計画だったのニャァ! 長々書かずともわかっているだろうと思うので全力ではしょります。どちらかと言うと信乃シンパである背介さんをていよく追い払って敵中には信乃一人、しかしそうだとは気付くわけもなし。
舵をするのは村のゴロツキ土太郎。ところで網乾…船でお茶用意とか出来ちゃうんだな……何か長閑だな…とか思っちゃった。聞いた話だけど電車でもお茶飲んじゃう英国人みたいな。
そして蟇六ニセの溺れ! 信乃助けるためにばちゃん! 土太郎も信乃を陥れるためにぼちゃん!
んであぼちゃんは刀のすり替えでございますわ。が、村雨丸だと気付いた彼。まんまと自分のものにしちゃうのでした! 人選ミスだね^^

信乃がすり替えに気付かなかった理由。自分を溺死させようとしたんだろうと思ってて、しかしそっちが偽の企てで、まさかすり替えの方が主目的だったとはさしもの信乃も気付かんかったようですよ。囮って大事だな。「あわただしい折でもあり、夜中でもあったので、刀を抜いてこれを確かめることはしなかった」(完訳より)と書かれてるからそこそこ正当性(?)あるな…そんでそのまま忘れてたーみたいな流れ。あるある。あと神宮川の名付けやその辺りの地理について。ページ余ったかららしい。では第24回この辺で。
(以上2013/05/26迄)

巻之二 第二十五回「情を含て浜路憂苦を訴ふ 奸を告て額蔵主家に還る」○
おひさし原典めも。次回に書く浜路の話の為に、25回の浜路くどき精読は必須ですなあ。
今回あっちゃこっちゃと書き散らします。のですごーい冗長ですすいません。

蟇六生還よかったよかった。少なくとも蟇六的にはうまくいってるのでさっさと帰る。この時土太郎に賃金をやるのだけど、ちょっと土太郎の説明なんかも。いわゆるゴロツキってやつなのだね。「こんなん一生の恥やし禁止令とか出たらヤだし亀篠には言わんといてね><」な蟇六です。背介さん、やっとやってくるけど今更過ぎるわどあほうと言われてる。しょぼんぬ。

許我行き最後の晩餐〜 蟇六・亀篠・信乃・額蔵の四人らしい。浜路いない…
で、路費に百匁あまりくれるわけだけど現代に置き換えてどのくらいだろう。たとえば蜑崎さんとかがくれるお金は「〜金」なのに、匁っていかにも安そうだ。ケチってるのが見え見えな気がしてならない。
蟇六、亀篠に計画の首尾を報告など。村雨丸(ニセ)を抜いて確かめる。鞘からは水出てる。サモが細工したものとは思わないアホ二人は奇也奇也と指に塗ったり額に塗ったりと読者にこれでもかと醜態を晒すのである。これ山手樹一郎の新編八犬伝のオリジナルだと思ってたら原文にあったのね…
ずっと欲しかった村雨がこの手に! 呑まずにはいられないでか! 信乃もいなくなるし余計めでたや! で、額蔵に話された信乃襲撃計画もここで話が出てくるのである。二人の仲は悪いからそういうことになっても違和感ないし〜なんてことを話しつつ。ところで「応(いらへ)はえせで点頭(うなづく)影は、円行燈の望の月、跳(おど)る兎に彷彿(さもに)たり」っていい表現 つっきっみてはねるっ♪by 谷山浩子
以下しばらく亀蟇のきちゃない宅飲みの様子をお楽しみください(したくない)

……で。

「何しに来た、なんて」
「……冷たいこと、言うのね。信乃さま」

浜路くどきだーー!!

「わかってくれよ、な、浜路」
「許我なんてさ、三日、四日くらいで、行って帰ってこれるんだし」
「嘘よ」
「嘘……って」
「ねえ信乃さま。籠の中の鳥はどうして飛びたいと思う?」
「え……?」
「それはね、空を想うからよ」
「じゃあね、男の人が故郷を去るのはどうしてだと思う?」
「……それは、出世したいから。きちんとした大人になりたいから」

↑これ書いててなんか「木綿のハンカチーフ」思い出した。

ここらへんはやっぱり原文で読んでもらいたいところなのであんまりぐちぐちとは、敢えて書かない。
ところで八犬伝よりも大きな自分の専門ジャンルは、女子の切ない心情を歌わせたら右に出る者はいないであろうシンガーソングライター・aikoさんです。
そこで敢えて浜路の為にaikoの曲選ぶなら「指先」かなあ…… って思う。

 どうして最後の日も あたしにキスをするの
 これ以上 ここに何を あなたは置いていくと言うの

キスはしてませんけど…… ほんとにね楽曲の切なさと相まってね アルバム「BABY」収録です
「指先」のこの部分もかなりグワッとくる↓

 繰り返す事で知る あなたの好きな所 同じ様にあたしにもあった?
 あなたはこんなにも胸が痛くなる位
 また新しく誰かを想うの?

浜路姫との仲を否定するわけじゃないけどさあ(´;ω;`) つらぽよ
「同じ様にあたしにもあった?」ってところはさ、
信乃が何にも浜路に対して思ってなかったでしょ? って暗に指摘されるみたいですっごいグサグサくる。

あと「運命」 「指先」の系譜にあるのが「運命」だと思ってるけどね。
浜路に歌われてごらんよ、「冗談まじりに運命を信じてた」なんてさ…… (´;ω;`)ブワッ

 あなたを愛していた もうそんなことも忘れた
 冗談まじりに運命を信じてた
 今は元気にしてるの?
 ねえ本当にあの時抱きしめてくれたのはあなただったの?

アルバム「時のシルエット」収録。好き過ぎて小説一本書いて本にした(12.11.18文フリで頒布)
もしかすると今後書く浜路の話もこの曲に影響されるかもしれぬ。

原典文章に戻る。
浜路が養子で、本当の両親がほかにいることを「御身も既に知らん」って言ってるけど、信乃は知ってたのか…? って思ったりするなど。今まで追ってきた限りしのはまの接触って全然無いし、本文に書いてないだけで馬琴さまは自分の頭の中でしのはまそれなりにラブラブさせてたのかもしれないなあ……いや、どうかなあ。それか読者に想像しろし(脳内補完しろ)って暗に要求してたりとか?
わからん。200年前の人が何考えて書いてたかなんてわきゃんない。
いや、そうやって放棄するのはイクないけど。ここの八犬伝のテーマは絶対に諦めないだけど。
私は想いたいのだ。馬琴さまの頭の中では、信乃と浜路は幸せであったんじゃないかって。
でも自分は原典至上主義で、なかなかテキストを裏切れないから、そう思うのも時として無駄なんじゃないかと思う。むなしくなる。そういうところが二次創作の辛いところだ。もはや自分の連作は二次創作を越えて自分の創作だけど、原作がある以上は。
むう。いかん。私情を書いてしまった。まあ個人用メモだしね、いいんだけど。
ところでM&Oplaysの八犬伝の前、大阪にいた時に、まさに舞台が始まる一時間前くらいにここをじっくり読んでいたものですので、舞台の浜路くどきにすごくすごく胸をえぐられました。切なかった(´;ω;`)

「私の思う1%でも信乃さまに誠があったら、これこれこう言うわけがあって帰れる日がはっきりとわからないから、一緒にいこう、って」
「言ってくださったとしても、約束した夫婦だわ、私たち。誰が駆け落ちだなんて謗れる?」

↑ちょっとだけ、自分なりに原文訳した。
 そして続く文章は。

「分つ袂にふり棄られて、あくがれて死んより、おん身刃にかけてたべ」

 「……ころ、して」
 「……はま、じ?」
 「私をおいていく、くらいなら……」
 「いや……いや!」
 「さよならなんて聞きたくない!!」
 「ずっとずっとずっとずっと、信乃さまを待って、会えないで、あたし、そんなので死にたくない!!」
 「捨てられて、ずっと、ずっと、思って、死んでく、くらいなら」
 「あたし」
 「あたしを」

 「今すぐに殺して!」

 「ねえ! 殺してよ! 信乃さま!」

 ――あたしは。あたしは。
 こんな風に、叫んでいた。信乃さまがどんな風に思ってるかなんてちっとも考えないで。
 まるで獣のように。吠えることしか知らない哀れな犬のように。
 ああ、ねえ、ごめんなさい。信乃さま。
 あたしは自分のことばっかりで。
 でもね信乃さま。あなただって。……あなただって。
 ――ううん、違う
 人間は、みんな、自分勝手なのよね。
 ……きっと。

何が言いたいのかと言うと、結局信乃は自分のことしか考えてないんだよ。
あなたが好きなのはあなた。自分のことしか好きじゃない。
ドラマ「最高の離婚」でそう言う台詞があって、その時の自分の状況もあってすごく胸に刺さった台詞でした。
でもね、犬士たちってみんなそうだと思う。自分勝手で意気がっていい気になってる、ただの馬鹿。ほんとにこの世からなる煩悩の犬の子よ。と書きながら、自分でも言い過ぎとわかっている。
ところで浜路の一人称をこれより「私」でなく「あたし」にすることにしたぞな。

ちょっと前後する書き方になってしまってあれですが、信乃もたいがい酷いよねー。
「夫にして夫にあらず」って、そらわかるけど、見捨てちまうのかよって。
漱石の三四郎みたいに言ってやりたいよね、「あなたはよっぽど度胸のない人ですね」って。
これを書いてて思ったけど、明治になると女性の方が強くなってるんだなあ…と思ったりもする。

結局信乃にとって浜路なんかどうでもいい子に過ぎんかったんや。
素性も知れんし、そうでなくても意地悪伯母夫婦の養子だし、それなのに素性知って由緒正しいとこのお嬢様ってわかったら掌ひっくり返してもう妻は持たないとか言う。甲斐の浜路姫に対してだってそうで、ただの田舎娘って時は拒否するくせに、姫ってわかると。
そして臆病。対面ばっかり気にする。親が起きるからとか何とか。

自分の都合ばっかりの卑怯者。
信乃好きな人ごめんね。
最大級にdisるけど、私はほんっとうに犬塚信乃戍孝が、
この点に置いては、大嫌いだ。

【信乃】そんな……こと。
【玉梓】ないと言い切れるのか小僧。
【玉梓】男はいつでも己の利ばかり追う。己の出世を願う。私の聞いてきた男共の願いもみんなそんなもんじゃった。
【玉梓】尤も私が叶えられるのがそう言うものばっかじゃったからだが。
【玉梓】お前たち男にとって女なぞただの道具にしか過ぎんのではないのけ。それか、己の道を邪魔するものでしか。
【伏姫】ちょ、ちょっとさすがに言い過ぎですわよ。
【額蔵】ここは気楽なコーナーで……
【玉梓】額蔵。前回のことを引っ張るではないがお前の方がよっぽどこいつよりあの女子のことを想っとるんではないか。
【額蔵】……でも、だって。
【額蔵】仕方ないじゃないですか! 原典にどうのこうの言っても!
【信乃】……そう、だよ。そうだよ! やっぱりあんたは怨霊だ。あんたの言うことは呪詛でしかない!
【信乃】大事なのは……読んでくれた誰かが、新しく意味を見つけ出すことなんだよ。
【信乃】“こうだったら、よかったのに”……って。
【信乃】そういう「もしも」を……思い浮かべてくれること、なんだよ。

八犬伝はそれが許されてる作品のような気がする。
でなきゃ、二百年経った今でも愛されてるはずがないもの。

【額蔵】哀れさで言えば……あなただって浜路さんと同じです。
【玉梓】……。
【伏姫】いーかげんお黙りなさいな。楽しいコーナーで参りましょう? あ、ここで一曲歌うのもいいかもしれませんわね!
【玉梓】なして歌うねん……
【伏姫】ここ最近ラジオブースからカラオケスナックになったんですの♪
【玉梓】居酒屋じゃなかったん!?

↑やむおちもじろぐに入れようと思ったけどつい書いてしまった。あまちゃんの影響がありありと伺える。

信乃に腹立つって言うか、腹立つのを通り越して虚しくなるのよね。
最近の私生活の事情もあって、こう思うのだけど、浜路だって自分のことばっかで信乃のこと考えてないような気もする。
この二人のこと考えてたらね、人を好きだってことって何なんだろう、恋してるとか傍にいたいって何なんだろうってすごい考えるようになってつらいんですよ。だってそれって突き詰めれば自分本位のことでさ、結局浜路も自分のことしか、信乃と同じで考えてないよね。
何を思っても結局それって自分本位でしょ? 相手のこと考えてないでしょ? って これ八犬伝関係ないですけどね。
恋なんて、恋愛なんて自分勝手だよなあて思うとなんか虚無感ひどいねん。だからいつまで経っても独り身なんだろうけど。
こう思う私がどうして恋愛小説書くんだろう、どうして恋愛の歌を歌うaikoを好きなんだろう。
っていよいよ八犬伝関係なくなってきたすいません。
結局、犬士だけじゃなく、私らは、みんな自分勝手なんかも知れん。
とにかく、「一緒に連れてく」って言うのをきくまでこっから動かない! とか、過世の讐か、まで言っちゃう信乃とか、

もーーーーーーこのシーンはどっちもペケ!! おまいら水でも被って反省しなさい!

【信乃】逆ギレだぁ…(汗)

どうするのが最善だったのかな。なんていくら思っても、私達は原典を越えることは出来なくて、
私はどちらかと言うと壊したくない。だから余計に虚しくなる。
でもそこで諦めたくない。たとえ無駄でも私にとって無駄にはしたくない。
書くしかない。だから私はペンを取る。キーボードを叩く。

とことんあらぶったので戻そう。
額蔵、この二人の会話を(会話聴いてたのかな)立ち聞きしてたり。
げに悲しきは死別より、生別にますものなし。死んだらさすがに諦めがつくけど、
生きてたら、生きてる限り何度でも会いたいし、会えるから、距離があってもへっちゃらだからな……
「信乃が如きはいよいよ稀なり」って、これ遠回しに非難してるように読める。
あと挿絵。この挿絵好きです。浜路がすごく深く伏せってるのが好きで。

出発の時がやってきたーん。
ここの亀蟇描写わろりんぬww ゆきねゆきねってシッシッってしてるみたいw 馬琴さまも楽しんで書いてないか滑稽過ぎw
こういうの結構現代でもあるあるネタだと思うのである。お父さんお母さんがこういうことあったりしない? 「何でわしに告げずに出ていったんや!」「二回も言って出ていかれましたけどwwww 寝言でしたかwwww」どっ としてる図が頭に浮かぶ。
浜路は、襖をちょっと開けて見守るだけ。そんな浜路は案の定塞ぎこむのである。
亀蟇は浜路のことが心配、なんじゃなくて、己の利のことが心配なのが何とも可哀想で…

時に文明十年、六月十八日。日付だけ見ればわたしの誕生日。
信乃19・浜路16・額蔵20。額蔵は信乃の身を守ることに尽力してきました。隠れて学術や剣術とかもばっちり。何か弓矢とかも使ってたらしい。こう言うのは全部隠してたんやけど力はあることはどしてもわかっちゃうので信乃を殺せと命じられました。

本格的に出発の前に額蔵のお母さんのお墓参りで行婦塚の説明なんだが…
額蔵……仕組んでここまでやるって正直末恐ろしいってレベルじゃないぞ。

【額蔵】てへぺろ☆
【信乃】てへぺろ、じゃないよ……(・_・;)

榎にしめ縄をかける→田を耕す者が見つけて奇妙に思う→そのまんまにしておけば祟りがあるっぺ!
→お金出しあって祠が出来る→オヒレがついて「婦人の諸病にきく!」と言う
→蟇六もそのまんまにしとくのはアレで、お金出した人に米を一俵やる と言うプロセス
ね? 簡単でしょう?(すごく久しぶりに使ったなーこのネットスラング) じゃねーよ!
敵に回したくないなあと思いました。

信乃もお参り、改めて額蔵のすごさを実感。まーゆっくりもしてられんので古河へ向かいます。
ここらへんの道ゆき文いい感じ。東京の、こう言うとあれだけどちょっと田舎の方かな? 石神井とか。北より…って感じ。あんまり土地勘ないけど、茨城の方まで行くから納得の道筋ではある感じ。
栗橋の宿まで誰かつけてきてたらいけなかったので互いに慣れ慣れしくはしてなかったのだけどどうやらつけてこないし、部屋相席の人もいないしーおしゃべり!おしゃべり! 信乃、蟇六に川に落とされた事件のお話。入水にかこつけて信乃さんを殺そうとしたんですよby額蔵
えーマァそれはそれとしてじゃあ何で村雨丸のこと忘れておれを古河にやったんだろう。浜路の婿入りに邪魔だったからかなあ 、俺を油断させて川で殺すって算段だったのかなあby信乃
いいえ結局は信乃を殺すためだろう、と亀篠から道中信乃を殺すよう言われたことを打ち明ける額蔵。
得物は匠作の形見の桐一文字の短刀(小刀)である(大刀はクライマックスで出てくる)
祖父も父もいい人だったのに何で伯母だけ……と嘆く信乃。
でも、人間いい人ばっかりってわけじゃないし、親戚なら尚更だと思うのよね。
現代でも親戚間で遺産がどうのこうのって話とかあるし。巡り合わせよ、全ては。怨憎会苦って教えもあるし。
そういえば、この伯母さんが信乃の財産を横取りするのって、「るいは智を呼ぶ」で言うとるいに当てられてる設定なんだなー、と書いてて気付く。まあライターさんはそんなこと知らずに書いてて、偶然当てはまっただけかもしれないけど。

信乃、番作の遺言を思い出す。曰く、伯母夫婦が改心するならいいけど、しなかったら村雨持ってさっさと去れい。
ま、結果は皆さん御承知の通りだ。村雨丸が取り換えられてるとは知らず「幸い宝刀もここにあるし」なんて言う信乃にプッとしつつ。
額蔵も一緒に古河に来てって言うけど、額蔵は浜路のことが気にかかるのであった。ので帰る。
ここでフォローしとけば信乃さんの悪評も立ちませんし。立たせときゃあいいのに(酷)
「よしや恩義は高からずとも、その家の糧をもて、人となりては主従なり」
って言う、額蔵のくそまじめなところ好きだよ。……ここるい智で言うとやっぱ痣の位置からして伊代なんだろうなあ。頭に浮かぶもん伊代がこんな風に言ってるとこ。んで智がやれやれって顔で言うのさ。ほんとに、伊代ってくそ真面目だよねって。

ウソキズつけて返り撃ちにされたーって言えば騙されるっすよ〜って言う額蔵に
「嘘でも君を傷つけたくないなあ」とかぬかしてる信乃よその心の1%でも浜路に向けてやれよこのホモ!!!!
浜路捨てておいてこいつ……ってやっぱり思う。
信乃好きな人ごめん! あーんムカつく!
信乃爆発しろ! 信乃爆発しろーーー!!!
いっぺん死んでこい!!!

【信乃】そ、そんなあ!

あと読み終わったあとももクロの「キミノアト」流してさも泣けるラブストーリーぽい演出にしたけど
ほんっとに信乃のことはずっと許さないからね????

 旅立つ為に 無理に隠した
 キミへの想いが胸を叩く
 キミが好きだよ キミだけがただ好きだよ
 ずっと消えない跡 I love you

信乃から浜路への愛がホントにあるとするなら、
「旅立つ為に 無理に隠した キミへの想いが胸を叩く」ってのはすごくシンクロしますね。
二番の「叫び続けたその名前 これから誰が呼ぶの?」はむしろ浜路→信乃っぽいが。
あと「どうせダメだと 言い聞かせてた その嘘に心だけが気付く」ってのも、私が書こうとしてる浜路に近いわ、かなり。

というわけでかなり四方八方自由に書き散らした問題の第25回でした。
長くなってきたので26回以降は別ページにします。
(以上2013/06/09迄)

第26回〜第30回へ

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