二番目のいぬのおはなし




 むかしむかしのおはなしです。
 あるところに、五人の若者がおりました。

 血は繋がっていないけれど、魂のきょうだいです。とても立派な若者達です。
 五人の若者は、まだ見ぬきょうだいを求め、旅に出ようとするところでした。
 ところが、大勢の敵が攻めて来たのです。
 戦いを逃れる内に、五人はばらばらになってしまいました。



 二番目に年長の若者は、仲間の行方をほうぼう探し求めました。
 この若者は、大変に気持ちの良い性格をしておりました。
 周りの皆から、それはそれは好かれておりました。
 だけど本当は、とても身分の低いひとでした。
 助けられなければ、きっと死んでしまうしかなかった、ただのこどもでした。

 でも、若者は自分の実のお父さんを救ってくれた人のもとで育ちました。
 だから立派な若者になりました。世に二人とない強者とも呼ばれました。
 他の四人からもたいへん信頼されておりました。
 若者も、みんなと旅に出ることを楽しみにしていました。




 それでも、今はひとりぼっちです。
 若者には、お父さんもお母さんも、実のお父さんも、もういません。
 仲間達だっていません。
 一人であてどもなく歩く姿は、まるで野良犬みたいです。


 いっぱい歩いて、たくさん人に聞いて回ったのに、仲間と出会えません。
 まるで仲間達からこないでと言われているみたいです。


 そうです。若者だけ、誇り高い血を引いておりません。
 牢屋にだって入っていたのです。
 とてもとても暗い闇の中に、若者はいたのです。


 そこで若者は、死のうとさえ思っていました。
 若者は、きょうだい達の中に入ってはいけないのでしょうか?




 いいえ。いいえ。
 そんなのはただのこじつけです。そして甘えです。
 若者はそんな弱い心に負けない、強い心を持ったひとでした。


 若者は思います。
 もしかしたら、みんな、ここじゃなくて、
 もっともっと遠くにいるのかもしれないと。



 だから、若者は、ここからいなくなりました。


 どこへ行ったの? 何をしているの?

 本当は、逃げたんじゃないの?



 でも、もう若者にきくことは出来ません。
 若者は、もういなくなりました。




 そして、戦いを離れた若者は、遠い地で夢を見るのです。


 ええ、きっと、懐かしい夢を見るのです。




next

はちあいトップ
小説トップ

inserted by FC2 system