「あの、鳴滝君。……志摩子さんも、もしかして……」
「え……? 志摩子さんが、どうかした?」
「あ、うん。あの……、「こちらの世界」とか、「あっちの世界」とか、言ってたり、しました?」
俺が持っていた志摩子さん側のピースと、音宮さんが持っていたミツ側のピースががっちりと噛み合う。幻聴まで耳の奥で聴こえた。
「……言ってた。それに志摩子さんは、制服のこととか、文化祭のこととか、そもそも学校のことを、知らなかった」
「ミツ君は……綿あめや、縁日で食べられるようなものや、お金のことを、知らなかったんです」
二人、顔を見合わせた。互いに恥じらいはない。共有するものは、疑問だった。
志摩子さんと、ミツ。二人は一体、何者なのだろう。