遊園地に行く日がやってきた。その日はとにかく快晴だった。過ぎ去った夏を思い出させるのに十分な程暑く、人出もそれなりに多かった。志人は日焼けしないように、熱射病にならないようにと気を使っていたら、変装したかのように芸能人のオーラを消すことが出来た。サングラスだと逆に目立ちそうなので、眼鏡をかけたらとりあえず人ごみにまぎれられるほどになる。


「あっついねー」


 しかし暑さに負けずかくれ子は入り口で太陽が照らす数々のアトラクションに顔をせっせと動かしている。瞳はやはりこれから始まる楽しみにわくわくしてきらめいていた。

「よーし、どれから行くんや?」
「じぇっとこーすたー!」
「乗れるのかお前」

 志人の心配をよそに、かくれ子はぎりぎり身長制限をクリアーした。三人でキリが悪いからと光也は無理やり志人とかくれ子を乗せた。そして二人はびゅんびゅんと風を切り、さらに風になった。

「今度はお前乗れっ。どーせ絶叫系苦手なんだろ!」
「そんなんじゃないって」
「つぎいこつぎいこー!」
「よーし次ー!」

 おいおい、と志人は思いながらも二人についていく。ジェットコースターは久しぶりだったので、思いがけず志人は冷や汗が多く出たのだ。心臓もばくばくと活発に動いている。

 おばけ屋敷で恐怖を味わい、メリーゴーラウンドに乗った後に昼食をとる。遊園地という楽しさと笑いが溢れる場所で、三人で食べていると妙に美味しかった。こんなにほのぼのするのはおそらく光也も久しぶりで、志人と同じ様な笑顔をしている。

 その後は再び絶叫系で、今度は三人が一緒に乗れるものを選ぶ。光也は苦手どころかむしろ好きなようだった。かくれ子と一緒にげらげら笑っていたが志人は苦笑いだった。
 そしてコーヒーカップでぐるぐる回り、ミラーハウスで鏡に幾人もの志人やかくれ子を写す。幻想的なその後にまた絶叫系ときたので志人は呆れてしまった。そんな風に時を過ごし、あっという間に夕暮れ時が来た。
 観覧車から出て入り口に帰ろうとすると、かくれ子がベンチに座り込んで動かなかった。

「疲れたのか」
「ほんならなんか冷たいもん買うてくるわ。二人で待っとりー」

 志人が文句を言う前に光也はその場を去った。やれやれと思い志人はかくれ子の隣に座った。

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