やがて私は父と母と近所の人達に発見された。中にはよそよそしくなった友達の姿が、なんと全員いた。あの男子君と女子はさすがにいなかったが――彼女らは皆しきりに謝った。
 私は――私も、謝った。
 こんな世界を燃やそうとした私は、彼女らに、世界に、ただ、謝った。


 私の火にまつわる話はざっとこんなものである。何故最後の一本の火があんなに燃え、幻を映し出したのかはわからない。随分煙を吸って寒くてでも炎の傍で熱くて要するに弱っていて、という状況だったから私が見た幻覚と片づけるのが一番いいだろう。幻覚という言葉は幻が入っているから十分だ。
 だけど――幻想を許してくれるのならば、あれは火の精か、火の神様が与えてくれた奇跡なのかもしれない。自分で言うのもあれだが、火が好きだなんて将来危ない性癖を持ちそうな奇特な子で、星の巡りが悪ければ焼身自殺を図りかねなかった奴だ。奇跡じゃなく炎側からのいい加減にしろという気つけ薬でもあっただろうか。……ともかく何でもいいが、そんな、火の贈り物だというファンタジーがあってもいいように思う。
 男子君と女子さんはその後どうなっているかわからない。女子さんの異常な執着が治るとは到底思えないし、男子君はその異常さに気付けないならばその程度の人間なのだと思うことにした。もう何とも思っていないが――そう思うのはやはり、先述したとおり寂しいものだった。


 けれど――火が永遠には燃え続けないように、何にでも、終わりが来る。
 寂しんでばかりはいられない。
 私は燃え尽きた蝋燭を処分し、次の蝋燭に火を灯すように、生きていくのだろう。
 私の大切な、普通の世界を維持しながら、ゆっくりと、暖かに、芯を燃やしていく。
 そしていつか、燃えるような恋がしたい――と願うのは、やはり気取り過ぎだろうか?




(了)
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