白昼夢 あるいは創造との遊戯





 そこは白い部屋なの。


 白い壁、白い床、白いカーテン。そして白い本。


 めくってもめくっても、真っ白いページとばかり顔を合わせる。

 
 私の服も白いの。真っ白なワンピース。肌もきっと白い。


 私はどんな名前で、どんな顔をしていて、何歳か全く知らない。
 性別もわからない。容姿に関しては、髪が長いことくらいしか知らない。

 それはつまり、私はどんな名前でもよく、どんな顔でもよく、何歳でもいいということ。
 男でもあり女でもある。

 白い部屋についてもほとんど同じ。
 どの国のどの場所にその部屋があるか、じゃなくて、どこにでもある場所。
 そこに流れる時間も自由。一瞬でも一日でも、永遠でもいい。

 そんな場所に私はいる。



 私を不憫に思う? 私はどこの誰でもない「誰でもない誰か」――あえて加えるなら白い――だから。
 でも、心配する必要はないわ。
 私には楽しみにしていることがあるの。


 この白い部屋に訪れた人と遊ぶことよ。


 訪れた人はみんな困った顔をしている。だけど私が駆け寄って、遊ぼうよ、という風に手や足に纏わりついたりすると、すぐくすぐったそうな顔をして、私をかついでぐるぐると回転したり、真っ白な画用紙に向かって一緒に絵を描いたり、疲れると一緒にお茶を飲んだりするの。


 それが私にとっては幸福なの。


 白い部屋で、真っ白で暖かい光に包まれて、訪れた人々と時を過ごす。
 部屋から出ていく時、みんなどこか満足した顔で帰っていく。
 ずっと探していた宝物をやっと見つけて、嬉しいな、って、言わなくてもわかっちゃうくらい、みんな幸せそうな顔をしているのよ。


 私は確かにどこの誰でもない。
 だけどここに来る人々を少しでも暖かな気分を与えることが出来る。何かが出来ることは私という個よりもずっと大切なのよ。

 ここに来る人々も、きっと何かが出来る人。

 そしてその幸せな笑顔は、他の人にも伝わっていく。
 その笑顔で、何かが出来る人が増えていく気がするの。

 そしたら私はもっとたくさんの人とたくさん遊んだり美味しくお茶を飲んだりすることが出来る。
 その人たちもまた満足感という幸せを得るはずよ。


 もっともっと笑顔が伝わって、ここに来る人々が増えれば、
 それはどんなことよりも素敵なことでしょうね。



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