瀧田城の中心に――姫の御座・プリンセスパレスに十二人と陽仁、シリウスが到着した時には、もう太陽は天頂付近に登っていた。それぞれの瞳に、宙に浮かぶ優しい黄の光が映っている。
「初めて来たけど……なんか、変に懐かしい感じがするわね」
シュリは満足そうに息をつく。長い距離を歩いたこともあって、誰もがその光に安心感と癒しと安らぎを覚えていた。
シリウスの指示に従って光を囲む。カーレンは南に、李白は西に、チルチルは東に、シュリは北に。三十年前、彼女らの珠は四方にきっかりと飛んでいった。今シリウスはそれを思い出しているのだろう、深く目を閉じて、あの日と今の光景を焼きつけている。
そして星座順に八人が並んでいく。誰がどこに飛んでいったかはわからない。八つの珠――人が行うべき八つの道を司る珠は、ばらばらに飛び散った。
「スピカ君」
唐突に、オーレが隣のスピカに話しかけてくる。
「僕の言ったこと、覚えているかい?」
オーレの横顔は相変わらず不吉に歪んでいる。
スピカは、オーレが何を指しているかわからなかったから、黙っていた。
「あざの位置のことだよ。
ニコ君は左わき腹、双助君は背中、僕は左胸、スピカ君は右肘、花火君は左肩、与一君は右頬、信乃君は左二の腕、太望君はお尻に――僕らはてんでばらばら、なのさ」
「ああ、姫達は決まっているって話ですか、位置が」
「そうだよ。でも――違う。僕の考えによれば――シュリ君とカーレン君が」
考え過ぎなだけであればいい、そう呟くと同時に珠は光り出した。
赤の光が、白の光が、青の光が、黒の光が、そして八つの、黄色に近い光が――大いなる黄の光を囲む。
「ようやく、姉上が……」
陽仁が声を漏らす。シリウスも清々しい顔で黄の光を見つめる。
しかし、光は突然。弱まった。
「え――」
「あら? どうしちゃったのかしら」
中央の光でさえも、段々弱まっていく。
「光が――消えてく?」
まさか。十二人が揃うと、陽姫が復活するのではなく――
消滅してしまうのか。
そんな恐怖がよぎった時、かあっと光は急に強くなり、とても目を開けていられなくなる。
まぶたの裏に残った光の残骸が――紫に色づく。
そしてスピカは体が強風や爆風で飛ばされたような気がした。
意識が遠のいていく。