「――わかってるわよ」
 両手で両頬をさすり、シュリは立ち上がった。立ち上がってみると、シュリは信乃よりも少し背が低いだけで、女にしては高身長であることがわかる。
 信乃も、花依のことを身が張り裂けんばかりに心配している。そのことは、関係を知っている者ならばわかる。二人の始まりからを見ているシュリは尚更で、かつ、花依と共に育ってきたシュリの心配は、それとは比にならない。

 泣いて後悔している暇などない。

「若を救出したみたいに、シュリさん達の力を使えばすぐに姫様は助かるはずじゃ」
「そうよっ、お姉さま、急ぎましょう!」
 チルチルの木々や植物を操る力、李白の石や金属を生成し、操る力、シュリの水を生み出し操る力、そしてカーレンの火の能力はまさに一騎当千の戦力であり、守りにも使える。
「行こう、カーレン。……大丈夫か?」
「……うん。大丈夫だよ」
 カーレンはそう言って微笑する。しかしどこか、強さがない。





 ――夢のことは一度忘れ、現実と戦わねば。
 そう思ったから、カーレンは赤い目を閉じ、再び開く。燃える炎のようなその目はまっすぐ前を見ていた。
 そうしなければ、たちまち夢の不安に――そして長い間、気付けずにいた恐怖に、引き込まれてしまうだろうから。


  3
黄の章(上)第二話に続く
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