玉響は血で着物を染めて舜の前に出現した。舜はぞくりとする。




「左大臣を(あや)めてきた」




 玉響は目を細めた。


「な」
「殺さなくても、とあなたは言いたいんでしょう」


 でも駄目さ、と柳の如き男は自分の白い指を、舌を蛇のようにして嘗めた。


「手を汚さずに変えられると思っているのか」


 赤い目で、舜を射る。暗い空間で、妖しく赤が光っている。獣のようだった。


 おやすみ、哀れな子供達と吐き捨てて玉響は水に溶けるようにどこかへ消えた。
 舜は口を真一文字に結んで、必死に何かに耐えていた。





 夜はまだまだ明けそうにない。


(了)

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