ただし、屋敷をそれによって壊さないようにと言おうとした時、天守へ続く階の途中できらりと何かが光った。

 こちらに来る。狙ってやってくる。

 スピカの何十万本の神経を通り、思考が、空気を貫く数本の矢の速さを超えスピカは無意識に蟹座の姫の姿をとらえた。矢の一本が彼か、彼女の体の何処かを貫こうとするのではないかという恐れが生まれる――その直前に、白い光が周りを包んだ。


「危ない!」


 李白の一声が辺り音の輪を広げ、右の手に君臨している白い珠がますます神聖な白を増していく。
 そしてばばばと鋭い音がスピカの背後に聞こえ、振り返ってみると白い石の壁が几帳のように六人を、矢の飛んでくる方向から見えなくしていた。


「――白は金、だね」


 オーレが言った。スピカは李白とオーレを交互に見る。スピカには、それが陰陽道のことを示していることがわかった。


「金。金属、ありとあらゆる鉱物か」
 スピカは胸をなでおろす。


「僕達の踏んだ通り、李白さんはその力を持っていたんだ」
 本当は先ほどカーレンも火を操っていたが、オーレはそのことも既に知っていそうだとスピカは彼を見て思う。


「――もしも、の時の為に、この力を幼少時から特訓しておいたのです」
「矢は刺さったんだな」
 退去した東対からの盗賊に当たっていた花火は白い石壁を見ながら訊いた。刺さっているぜと与一は答えた。


「唯一被害のない寝殿と天守に、首謀者がいるってことか」


 ぎりと照準を定めるように与一は天守を睨んだ。天守の屋根に人影が見える。



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