花火はようやく目を覚ました。飛び起きた彼の体は涙のような寝汗でしっとりと濡れていた。他人の寝息がかすかに聞こえる。




 縁側に出てみる。冷たかった。季節は秋へ進む。月の光と星の光が花火を照らした。赤い星が空の隅に見えたような気がした。


 あの時、季節は暑い夏の始めだった。今とは反対側に赤い星が瞬いていたかもしれない。


 あの赤い星のように花火は花依の亡き骸を燃やした。彼は妹の骨を拾うこと無く、運命にたちまちのまれていった。そして巡り巡った末、彼は京の都にいる。


 私を殺しにきたんでしょう。


 花依の言葉が再び聞こえた。花火は答えない。ただ涙を流した。花火にはそれで十分だったように思えた。



 本当はどんなに涙を流し血を流し、たとえ命を落としたとしても、足りない。
 あまりに遠すぎて光が強すぎる、繊細でいて強力な世界。



 月が冴えて白く見えた。花依が最後に着ていた服は白装束で、頭の二つの花も白かった。



 拾わずにいた彼女の骨も、透き通るような白に違いない。


 2
第一話
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