翌日、スピカとオーレ、そしてカーレンの三人はハーツの残る家を出た。
「おばあちゃん、いってくるね」
 ハーツは少し、淋しそうな目で、
「しっかり、しっかりいろんなものを見ておいでよ」
と言った。お前はこの島の巫女なんだからねとつけ加える。


「まあ、お前が生まれた時から何となくこういう運びになるんじゃないかと思ってたから
 淋しくなんかないよ」
「よくいうねえ」
 カーレンはおどけて笑った。
 そして少し歩き出した時、カーレン、とハーツは呼び、何?とふり返る。


「近いうち、ここにお前は戻ってくるよ。
 その時――乗り越えられるように、しっかりおいき」


 カーレンはその言葉に対し、少し不思議に思いながら、うん、と大声で返事をした。何で、ここに戻ることがあるんだ? とスピカも一人思い、オーレを見ると、ハーツと同じような顔――達観する仙人のような顔をしていた。いずれスピカにはない力で何かを感じているのだろう。


 街を横切ると、主婦たちや少女たちや、仕事中の男性たち、そして子供たちに老人たちと、じつに様々な人がカーレンにしばしの別れを告げに立ち止まったり、会釈をしてすれ違ったりする。
 スピカはやはり、カーレンをつれていくことに後ろめたさを感じたが、ある時カーレンはスピカの右手を自分の左手でつつんだ。そしてスピカとオーレを導く。
 蟹座は、乙女座よりも獅子座よりも先に、太陽を宿す。
 そして、先にいる牡羊座や牡牛座、双子座のように導く。




 きっと導く。




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