何時間眠ったか知れないが、辺りは真っ暗で、星だけが明るかった。外に出ると細い月も高く昇っていた。スピカはもう一度家に入り服を替えた。カーレンがいる気配がないことに気付いたのはその時だった。
 そしてスピカは散歩に繰り出した。始終考えていたのは、カーレンを自分達が奪うことと、昔の自分のことだった。とりわけ前者の方の割合が高かった。


 プリンセスパレスで煌々(こうこう)と、日夜関わらず輝く黄の光は、スピカにとってもオーレにとっても、他の六人にとっても大事なものだった。母のような父のような暖かさを感じることができ、陽姫を復活させたい気持ちも、その暖かさの泉から湧く。
 でも、それをもってしても、カーレンをこの島からつれ出すことはスピカには出来ないと感じた。島の娘としても、火に舞う舞姫としても、死を見守る巫女としても、あらゆる面からカーレンを抜くことをスピカは嫌悪した。


 気が付けば、音のない浜辺――昼間の火葬場に出ていた。
 夜になって、無音は輪をかけて無音。
 波の音をのぞいては、星のまたたく音でさえも聞こえてきそうなほどであった。
 一人、星を見上げる少女を見つけた。

 カーレンだった。

「あれ? スーちゃん。こんな遅くにどうしたの?」
 そう言いながらもカーレンは振り向くだけでその場を動かなかったので、スピカが近づいた。
「この前と逆だね」
 カーレンの髪は元通り、薄い金髪になっていた。少し前に洗ったのか、まだしっとりと潤いを保っている。

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