太陽がぎらぎらと燃えている。
風は吹き、波は踊り、何事もないように空は限りなく透明に近く青い。ふらふらあてもなく歩き出したスピカは、いつのまにか外へ出ていたオーレを見つけた。ちょうどいい岩場に腰掛けている。
近寄ると、気付かれる前に彼はこんなことをつぶやいていた。
「あの子が言ったこと――。
本当にそうだったら。なんであの時、運命は僕に死ねと言わなかったのか。
なぜ矛先を変えたんだろう。
もしあの時ああだったら、僕はこんな苦しんでないのに」
海に向かってオーレは何ともとらえがたい、悲痛な面持ちをしていた。スピカのまだ見たことのないオーレの顔だ。スピカはもちろんその台詞の真意を知らない。だが、その台詞はそのままスピカの過去にも転用できると思った。オーレはスピカに気付くと、いつも通り飄々とした顔になった。
翌日、曙の頃にスピカは目が覚めた。今一度目を閉じると、炎が浮かんだ。
全てを燃やす、灰にする、自分もまた飲まれてしまう。自らの長い髪がまるでスピカの全身の汗のように流れ、もつれ、体にはりついていた。その不快感から外に出た。
カーレンはティヌーの家にまだいるらしい。今もいるだろうか。スピカは足をその家へ運ばせたはずが自然、狂い始めた。東の空がぼんやり明るくまるで暗中の虫が光を求めるように、そちらへ行ってしまう。