カーレンが、和秦の神社でもよく見られる金剛鈴に似た祭具をしゃん、しゃん、と厳かに鳴らして聖火の前で舞う。火の粉も舞う。周りで添うように舞うのは昨日の少女らであった。


 陽炎に身をそらすこともなく、火からあふれ出す、火そのものの呼吸と共に踊る。
 熱が彼女を包むように、彼女から生まれる何もかも、火を、いや祭に繰り出した総ての者を包む。


 舞い。そして、火。


 スピカはこの組み合わせに妙に心を揺さぶられた。



 あの時――何故自分は、幼き自分は、火の海の中で生き残ってしまったのだろう。
 何故あの男の妖しい姿に挑まずに死ねなかったのだろう。



 自分は何故、何故陽姫を中心に廻る運命の中に身を置いているのだ。
 ここにいなかったら、死んでゆけただろうに。あの男を殺すことは出来なくても。


 しかし同時にスピカはカーレンから生まれる熱のような何かにも、心を揺さぶられていた。それは、彼女と出会う前に襲ってきた一種の懐かしさ、あれとよく、似ていた。


 やはり火の粉は舞う。星になりたいと願うように空へ。






 しゃん、と鈴を鳴らしたカーレンが、どこかで燃え尽きる命を感じ取るのに、さほど時間はかからなかった。カーレンの血潮のように赤い目がきれいな円を見せるほど彼女は、それでも静かに、驚く。



 火が揺れ、カーレンの赤い衣も揺れる。



 月だけがその命をみていた。

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第四話
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