「辰川の子孫よ。お前はもうわかっているんだろう?私の存在が悪だったのか。


 ――それとも、初代の仕打ちが悪だったのか。


 私がこうして、この里見に呪いをかけようと怨霊と化していることから!」


 陽姫はその怒号に震え、空を見上げた。祠は、高く上った太陽が覗けるように天球状の屋根のてっぺんは開いている。雨の日は祈りに適していない。今も、雨の日のような空にすっかり変わった。
 しかし、太陽は出ていた。でも。


 様子が、違う。


 悪いことが起こる――戦慄が陽姫をおそう。


「私の子供を」


 玉梓はゆっくり、微笑みながら



「よくも、十二人の子供達を、殺してくれたな!」



 玉梓が叫ぶ。陽姫が目を見張る。


「太陽が――欠けてく!」


 日蝕。――その現象の原理はわからないけれど――太陽を愛する陽姫にとって、最大の凶事。

 そして陽姫はきっ、と玉梓を、睨むのではなく、見つめた。

「――その目は何だというのだ」

「陽姫。ここは不吉だ、逃げてください!」
「逃げない」
 陽姫はきっぱりと言い放った。
 彼女はすでに、感じとっていた。玉梓の怒り、悲しみ、そしてその裏にある何かさえ。
 玉梓の方はますます、陽姫をにらんだ。


「そんな目で、見るな」


 陽姫はしかし目を逸らさなかった。
 二人の間に太陽が浮かんだ。
 幻覚だろうか、しかし、欠けつづけ、暗黒の陽と変化してゆく、今天狼の頭上にあるものとそっくりそのままなものが。
 毅然としていた陽姫が、その太陽を見てひるんだ。


「私の――呪いだ」


 とその時、完全に黒の塊となり、黒い輝きを放つ太陽が、猛烈な速さで、陽姫の腹に、飛び込んだ。
 陽姫の目がまんまるく開く。一瞬、時が止まったように静かになる。



 ――次の瞬間。



「うっ、ぎゃあああああああああ!」



 全てを突き抜ける程の大慟哭を発し、陽姫はあおむけに倒れてゆく。天狼が背を支えたので、完全に倒れはしなかったが、陽姫は今にも息絶えそうに呼吸を荒くして、大量の汗を流して体を何度も痙攣させていた。


「お前! 何をした!」
「凶悪な黒き太陽の精を孕ませてやったのよ」


 天狼がその言葉に慄然とし、何も言えないでいることに玉梓は嗤った。その時、


「たとえ――蝕まれていても、太陽は太陽よっ!」


と陽姫が力を振り絞って叫んだ。


 ぱあっと陽姫の腹の上で光がはじけた。

 その光は黄色く発光し、やがて、ぽつぽつと何かが浮かんできた。

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