こうして、三十年前に散らばった十二の魂は、長い時間と血と涙をかけてようやく一つに集結した。
 しかし十二人をまず待っていたものは、太陽の姫の出現ではなかった。








 安房・館山城――。


 赤い目をし、闇を溶かしこんだような長い黒髪の尼が見つめる先にいるのは、力無く横たわった一人の少女だった。
 絹のようになめらかな髪が扇のように広がっている。こめかみのあたりには、二つの白い花飾り。
 花の依り代、花依姫。


 マーラが船虫が玉響が浮かべたものと同じ妖しい嗤いを尼――妙椿は浮かべた。
 まるで闇から抜け出したように、暗くてどこか甘美な嗤いは仮面に張り付いたように離れない。


「待っていておくれ」

 虚空に青白い、透けるような手を上げる。


「子供達よ――」


 それは邪悪だがどこか、悲しく狂おしく、その空間に響いた。


      7
黄の章(上)に続く
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