肇輯(トビラに戻る)

○各回じゃんぷ○
第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 第16回 第17回 第18回 第19回 第20回

〜南総里見八犬伝 第二輯〜(岩波文庫第一巻収録)

いつのまにか書きたい欲がどんどん出てゆっくり進行になってしまいやっとこさ第二輯に入りました。
本当はもっとサクサク読みたいのにい。コンテンツになると思ったらこれだ、この貧乏性め。

【伏姫】ところで、開いたら最初に漢文が書いてありますわね。
【玉梓】「又読書ことは、おん父の才を稟て、おのづから理義に怜悧く」(第12回より)とあるから当然……
【伏姫】モッチロン! 読めますわよー(・ω・)フンス

  ……伏姫読書中……

【伏姫】なるほどわからん!
【玉梓】だめだこりゃ……

JICC完訳八犬伝第一巻は私が長年読めなかったそこも訳してくれているので大変ありがたかったです。
小説、空想を書くことについての馬琴さまの言。「小説には小説なりの真実がある」に心打たれました。以下ちょっと引用。
「正史の立場から稗史を見れば、まさにそこに書かれているのは嘘八百。だれにでもその違いは一目瞭然である。
 だが、稗史は読まれる。ものずきかもしれないが、これを咎めることはだれにもできない。
 わたしが小説を書くゆえんも、またそこにある」
それがファンタジーだからといって、嘘だからといっても、読んだ人に届いたそれは、まことであると私は思います。
なんてあだしごとはさておきつ進めましょう。出せない漢字は、そのまま平仮名に直すことにしました。

○巻頭挿絵&馬琴さまめっせーじ○
なんか額蔵がいかめしい 誰だこいつ……?? すごいよ隈取りみたいなの。信乃は何かジョジョのディオっぽい顔してる。
番作パパが手束ママに包丁振りおろそうとしてるのこわいです。そんで浜路が黒づくめ。あやしいヒロインな感じする。
本当は七巻十四で出したかったんだけど本屋の好みがうるさいんで巻五で出してるよ。
そんで今の挿絵には三巻ではじめて出る奴らもいるからね。ってことです。八犬伝なら八巻十六でもよかったんでは。


巻之一 第十一回「仙翁夢に富山に栞す 貞行暗に霊書を献る」○
軽く前回までのあらすじ。富山に入った伏姫が恥ずかしがらないように樵なんかも山に入っちゃダメ命令を出します。
そして同じように気がかりなのは大輔。どこで何してるんだよあんちくしょう(そこまでは言ってない)

しかしそれにも増して気がかりなのは伏姫ママ五十子の容体。娘を心配して日に日に衰弱していきます。
一目会いたい! お願い帰ってきて! 役行者の岩室に行くと嘘をついて富山に人を遣わせますが、富山は大変仙境であります。
蜑崎さんパパのこともある。誰も近付けるもんではない。よって五十子ますます弱まる。あわれや……
「民には仁義の君なりとも、子には不慈なる親とまうさん」 義実のハートにざくざくっと来るでしょうね…
でもあれだなーこういう徳とかってその人の判断次第じゃん? 忠たらんと欲すれば不孝となり〜って大河の清盛で重盛が言ってた。
ものすごいことのように思えるけど、考えてみればすごいあやふやなものだな。誰かの正義が誰かの不義だったりするわけじゃないですか。

そんなことはどうでもよくて、富山だってあなたの領地なんだから入ればいいのに! ばか! おたんこなす! ということは言ってませんが、そう言う五十子にわかったわかった近いうちに何とかするしあんじょうしときや(何で関西弁)ととりあえずかりそめの約束をして、さてどうしようか。
そこに登場したのが伏姫の弟、後の八犬士にとってはお殿様の義成です。母上の為に富山いくお(`・ω・´)と血気さかんであるが、大事な跡取り息子だからやめときなさい。はあい…

ところでふと思ったのだけど、五十子の存在ってその後の八犬伝の女性に多かれ少なかれ影響を及ぼしていると思う。
イメージの根底にいるような気がする。男の方の事情を省みないでただ訴える。浜路くどきにしろ、雛衣にしろ。
弱い女性限定? いや八犬伝の女性は強い。では女性の弱さの象徴? 何となく玉梓にも通じるところがあると思うのだけど……
じゃあ伏姫はどうか。母・五十子に涙しながらも、彼女の声を振り切って富山へ入っていった彼女。
五十子の持つ弱いイメージ、というか「訴える女性像」を、彼女は纏っていないような気がする……
のだけど、でもどうだろうか。うーん。
もやもやなにやら書いておりますが、まあメモですので。さくっと次へ。

さあてどうしたもんやらなんやら……と悩んでいた義実は暁の頃に夢を見る。おじいさんが「今富山通れるようにしたから。栞結んどいたから」と告げて夢は終わってしまいます。でたーまた役行者だ!(二回目だけど) その時はあんまり信じてなかった義実。だが……
東條城にいる貞行、呼ばれたからきたよ! と訪問。えっ呼んでないよ?? えっ? えっ? な主従。
義実が夢に見たのと同じような老人が殿からの手紙を届けて至急やってきた、んですけど……伏姫様に会いに行くって…
その老人は、洲崎の窟から来たということはやはりっ! 役行者! ぽい人! あなたの後ろに\役行者!/(いやだな)
手紙は元の文字が消えて「如是畜生発菩提心」の八文字のみが記されているのでした… 挿絵を見る限り堂々とした字である。

役行者と伏姫の名詮自性のことについて。如是畜生発菩提心。ちょっとめもがてら訳すみたいな?
義実の解釈によると……伏姫が身を捨てたのは親と国の為、仁義八行を世の人々に喪わせないためであるけれど、
姫もその苦節義信の善果によって、如是畜生に誘われて成等正覚(迷いを捨て去って完全な悟りを開くこと)を達成出来るのだろう、
だから、姫をとどめることもせず……(以下略)
……かな。まあちょいと私の訳し方がまずいかもしらんが。

五十子の体調がどんどん悪くなって姫の安否が問いたい、というときにこんなことである。
まさに時はいまこそ来たれり!! 義実は貞行達と(ところで氏元どうしたの)「大山寺へ行く」と言って富山へ行くのデス! 義成おるすばん。挿絵の出歯亀してる感じの小物感いい。そして富山へ入って入って、夢の通りなんですよ枝曲げたりとか栞とかしてあって。
いよいよ人跡未踏ってところまできて、次回!
(以上2013/02/20まで)

巻之一 第十二回「富山の洞に畜生菩提心を発す 流水に泝りて神童未来果を説く」○
濁世煩悩色欲界……から始まる伏姫のモノローグっぽいところ好き。ぜひ読んでいただきたい。全てはユメマボロシなの。何とか訳すか小説に活かすかしたいものである。そんなわけで視点人物は義実から伏姫に切り変わって八房との富山での生活について描かれます。
最初の文章はちょう綺麗なのっ、このリズミカルなこと! 岩波一巻末に収録されている高田衛先生の「八犬伝を読む為に」で引用されている幸徳秋水の獄中書簡でもこのことについて書かれていたりする。いやほんと綺麗な文章です。春夏秋冬過ぎゆくよ。
「……世を捨て、あるいは世に捨てられてここに来たのは……
 わたしだけじゃ、なかったのね……」
うまい具合に山室が住むのに問題ないくらいに整っている辺りに何か仕組まれてる感はあるが。
八房も、最初は色欲に難儀していたみたいだけど何とか苦しみを耐え抜いて伏姫のお経を聴いて癒されていくのである。良く頑張った八房よしよし。まあ伏姫も刀持って警戒してたわけだけどね。
そして山奥にありながらもなお美人な伏姫。しかもまだ十代です☆

【伏姫】富山で暮らせば今日からあなたもお肌がぴっちぴち、髪もさらさら☆ どうも、八犬伝のアイドル、伏姫でぇっす☆
【玉梓】んなわきゃない。

それにしても何となく鏡花の高野聖の女人を思い出すなあ。山媛って伏姫みたいな人を言うのかしら。
さてそんなある日のこと……

【伏姫】じっ、人面犬!!!!
【玉梓】いやお前のそれは犬人(いぬじん)じゃろ。

 そうです、ふと見た水面に犬の顔をした自分が……しかしそれは一瞬の心の迷いか、すぐかき消えてしまいます。
 だけどその日から胸が苦しいし、生理もなくなるし……お腹が張って……

【伏姫】お腹が張る……あっ! 腹水!?
【玉梓】えっ! 親父くさい病気!?

んなわきゃない。でもきっと遠からず自分は死んでしまうのだ……と思うけど死なない。いつのまにか城を去った秋がやってくる。
遠いふるさとの家族達を想い、さめざめ泣く。

「……ううん、泣いてちゃ、だめ」
 泣いて、泣いてどうするの。どうにもならない。こんなの、只の愚痴。
 お父様とお母様の為にここにいるのに、愛しい、会いたい、なんて、思ってはいけない。
「だめ、だわ」

ぎゅっと、涙を拭いぬぐい。食糧を探しに行ってる八房はまだ戻らない。仏に供えるお花でも摘んでこよう、と歩き出す。この辺りすごく好きなところです。小説でも是非書きたいところ。
ここで現れたるは人跡未踏の仙境だというのに牛に乗った謎の少年である。ここも訳したいというか小説でぜひ取り上げたいシーンだったりするのです。義実が富山入山禁止令を出したことや五十子が何度も遣いを出したこと、蜑崎さんパパが川を渡れず死んだことなどを教えます。そして伏姫は自分の病状(容態?)について訊くのですが…

「あはっ、あはは。そんなの妊娠に、決まってるじゃあないか!」

妊娠の兆候(つわりとかすっぱいもの食べたいとか)がまんま現代と変わらないのね……変わってないんだなあ。
えっいや夫いないし。いやいや八房は親が許した君の夫じゃないか〜。いやいやいや! わたしは未通女(を・と・め)ですから! 獣姦とかないですし! あーもう、なんでこんな子供に訊いたんだろ、わたしのばかばかばーか。くすん(涙) となっている伏姫をヨソに昔から別に性交しなくてもモノとモノの気が通じ合うことでモノが生まれるいわれを御紹介する。干将莫邪とかそうだったんだ…

「確かにね、お姉さん、あなたは犯されてはいない。未通女。確かにそうなんだろう。八房だって今は君を汚そうなんていう獣欲はないさ」
「でもさ。お姉さんは一度でも八房に身を許しここに伴われてきた。八房だって妻、いわば生涯の伴侶としてお姉さんのことを想っているんだよね」
「お姉さんのことが大好きで、お姉さんの読経を聴くことも大好きだった」
「お姉さんだって、八房が御経を聴いて菩提の道に入ろうとしているのを見て、ああ、わたしと同じだなあ、そう思ったでしょう?

「お姉さんと八房の情はもう――相感ず、なんだよ。お姉さん」

「ばかな、こと」
「ばかなこと言わないでちょうだい! 子供だからって、生意気な……」
「僕が見たところ、お姉さんのお腹にいる子供は八子……ううん、犬の子だから八匹って言うのがいいのかなあ」
「でもまだ形作られてない。形作られずして生まれて、生まれた後にまた生まれるのさ」
「ふふっ。これは全部宿因てやつの致すところ、でも安心して、善果の成るところ、だから」
「しゅく……いん」
「八房はね、もとは女の人なんだよ。可哀想に、お姉さんのお父さんを恨んで恨んで仕方がなかった。だから八房の身を借りてお姉さん達親子をさんざんに凌辱したのさ」
「じゃあ善果は何って訊かれると、八房がお姉さんを得たけれど、犯すことなく、お姉さんによる法華経の功徳でその女の人の恨みを晴らして菩提心を起こした。そして八つの子――八匹の犬を遺せたのさ」
「……わたしの、なか、に」
「尤も――本当に女の人の恨みを晴らせているかどうか。

 そんなの、僕は知らないけど、ね」

↑最後の童の台詞はたまきの脚色です。そのまま小説に使う用メモになっちゃった感。
でも玉梓の恨みはこの童の言葉を信じるなら既に晴らせているのですよ皆さん。
さて好きなシーンなので長くなりましたがその八つ子は里見を助ける将になるでしょー、そのお母さんたる伏姫は誰が拙しと言うことがあろうでしょうか。そもそも、禍福は糾える縄のごとし。今の災いがあって後の幸いがあるのだ。ところで役行者の縁者はこのことわざ好きだな私も好きだけど。などとしかめつらしく言って、

「お姉さんが子を産むとき、親と夫(をとこ)に会うだろうね」

あーあ、すっかり長話しちゃった。お師匠さん待ってるだろうなあ。かーえろ。って感じで帰っていくのでした。いやしかし、明らかに役行者本人かその遣いでしたね! バレバレですね!

それにしても玉梓の恨みが因となって八房が善果を遺すのだよね。それが八犬士。善。きっと善なる子。里見を助ける子供達。
禍福は糾える縄のごとし。うん。私はこういうのでも少しは玉梓救われてる気がするんだよ。どうも玉梓厨です。
……まあそんなこんなで伏姫はすっかり( ゚д゚)ポカーンとなっちゃって、次回!

巻之二 第十三回「尺素を遺て因果みづから訟 雲霧を払て妖しみはじめて休」○
信じられない……ヨロッな伏姫。
こうなったら! 死んでしまおう! OH!
【玉梓】思い切りいいのう
【伏姫】女は度胸!
【玉梓】使う方向性が間違っているような気がしなくもない。
何もしてないのに犬の子を孕むとかないから……ほんとないから! 潔白です!

【伏姫】そうです! みなさーん! 目を覚ましてください!(ももクロ夏菜子風)
【伏姫】わたしは潔白なんです! 処女です! 処女厨の皆さんの女神です! このビッチとは全然違いますので!!!
【玉梓】おい誰がビッチやコラ
【伏姫】本当のことを言ったまででーす(>▽の)−☆

それにしてもあの子供なんなのかしらブツブツ。多分役行者さまの示現なんだろうけど……
生まれてからまた生まれるとかなんなの? 親と夫にあうとかって……夫なんてそんな、婚約者の話もきいてないしーぶつくさ

【伏姫】ハイここでゲストー二回目の登場、ゝ大法師こと大輔でーす。
【大輔】あ、ありがたいのですが嫌な予感が……
【伏姫】まあともかく。
 ネッ? ここの文章に在る通りわたしはあなたという人の存在なんて
 全然! まったく! これっぽっちも! 毛ほども! 何もかも! 知らなかったんですからね?
【大輔】グサグサグサグサッ おおおおうおおう……
【玉梓】ロクな挨拶も出来ておらん内にこの仕打ち! だがいいぞもっとやれ

あっ、お母様の為に遺書は残しておかないと…と遺書かきかき。私の心に氷点があったことを…(それは三浦綾子

八房、ごはんとってきたよ! って薦めるけどいらん……な伏姫。そらそうだ死ぬもんね。
数珠を見ると、如是畜生発菩提心の字が変わってる……仁義礼智忠信孝悌に!

えーと。つらつら考えてみるに……わたしは八房の気をうけてただならぬ身……つまり妊婦になってしまい、このまま終わることはまさしく畜生道の苦しみってことですけど、
でも八房の方は菩提心を発して、来世は人に生まれるかもわからない…ということを言いたいのかしらこの数珠は。
今わたしが八房を殺せば彼にとって畜生を生を終えることが出来るから善いことではあるのかもしれないけど、
でもやっぱりそれは不仁……よね。
なんてたって里見を救ってくれた犬ですもの一応。忠犬、うん。
それに……この富山でわたしの為に食糧を探してきてくれたのも、八房だもの。
……ありがとう、八房。わたしと、一緒にいてくれて。
来世はきっと……豊かな家のところに生まれてくるかもしれないからって、今ここで殺してしまうのは忍びないわ。
わたしの言葉がわかってくれるのなら、うん。
八房に、任せよう。

↑と、一部脚色を交えて訳してみたり。

八房、お前はどうする? 正直生きて山から降りても虐め殺されてしまうだけだと思うけど……と訊いたらば、ついてく! な八房。
発菩提心! まさしく忠犬愛犬ここに極まれり。ここはすごく書きたいシーンがあるのでたくさん妄想頑張ろうと思います。

御経をひとしきり読む伏姫。ここで法華経についての講釈がちょろっと。ダイバダッタ。
【伏姫】女人はこゝろ垢穢る。身に五障ありで成仏出来ないんですって。
【玉梓】釈迦も孔子も女性の牢獄作りは上手かった、とかつて夭折した詩人がいたのう。
【伏姫】最初から世知辛い世の中でしたのね。
【玉梓】呪いじゃの。
【伏姫】呪いですわねえ。って怨霊がそれ言いますー?
【玉梓】しかしながら龍女は八歳で変成男子して成仏を遂げたんじゃそーじゃ。偉いもんじゃのー結局は男子になってるが。
【伏姫】あーっ無視いっけないんだー!
思うにこれは女性の教徒を増やそうとした計略だったのではないかと思う……
イヤネ詳しいことは全然知らないんだけど、最初から悪い状態だけど努力次第であなたも成仏! みたいなあれ。

次のシーンに行く前に挿絵について。
【伏姫】あらーっ神變大菩薩つまり役行者の隣にあなた。たまつさ。
【玉梓】一般的にはここで私の恨みが晴れていると読むらしい。
【伏姫】ねーえあなたもしかして役行者の縁者か何かじゃござんせんの?
【玉梓】しーらない。
でも妙椿が偽役行者になったりもするし口の咎で呪いを発動させることも出来る神通力と言いますか、それも役行者に通じるところっぽい気がするような。玉梓の怨霊がついている八房が富山を選んだのも玉梓が役行者関係のなにかだったとか……
例えばプリパレの玉梓じゃないけどもとは梓巫女だったとかさーないか。

そしていざ、死にに行こう……水際へ行こうとしてたら、だ!!!

ダン!!! ダンッ!!!!!

そうです! 大輔です! 彼が発砲し一発は八房に、もう一発は伏姫を貫きます! たぶん貫いてる! たぶん!
で。大輔ちょっとやりすぎ。

「打倒たる八房を、なお撃こと五、六十、骨砕け皮破れて復甦うべくもあらざれば、にっこと笑て」

ちょっとこれにはガチでうわあって思った。五、六十発も撃ち込むとか最悪。
そら確実に死なせたいだろーけど。笑ってるし。こいつは八房のことをなんだと思ってるんだ。里見を救った犬だぞ。

【伏姫】――さて。
【伏姫】ここに呼ばれた意味はわかっていますわね大輔
【大輔】ひぎいっ!?
【伏姫】動物aiko協会、じゃなかった動物愛護協会にチクっちゃおうかしらこれ…
【玉梓】うわードン引きじゃわこれは。猟師でもここまでやらんぞ
【伏・玉】さいあくー……(クズを見る目)
【大輔】ごめッ!! ごめんなさッ!?
【伏姫】ごめんですんだら八犬伝は28年も続きませんでしたわよ<●><●>ゴゴゴゴゴ
【伏姫】八房!
【八房】グルルルルウルルルルルルウルル
【大輔】ひいッ!?!?

【伏姫】ヤッチマイナ!!!!

【八房】バウワウワウウワウ!!
【大輔】ギャアアアアアアアアアアアアアア

−以下、見せられないよ!―


しきりなおし。
アーッ伏姫も死んでるザンス!!(赤塚富士夫意識) かくなる上はっ! 腹を!
「待て! 早まるな!」と止めたのは義実だった――
八郎の悲劇を繰り返すことを防げてよかったね義実…でも歌いながら入ってくるのはちょっとどうかと思った
今までの経緯を説明し、処刑してくんろ、な自称八逆の罪人・大輔。そして義実も今までの諸々の因果を清算するように語る。
玉梓の怨恨が八房となって姫を攫い、その伏姫は八郎の子・大輔に撃たれ、大輔は思いがけず伏姫を殺してしまったことになる。
すごい。不幸のスパイラルここに極まれりでこりゃいい加減に玉梓もせいせいしたあーっはははって成仏するわ。

さてここでちょっとひっかかるところがある。
義実が「口の咎」について言うところなのだけど、私達が意識する、あるいは後世の二次作品や翻訳小説などなどにおいて、
義実の口の咎って「玉梓を助けると言ったのにそれを反故にしたこと」ってことを指すんだと思うし実際私もそう思うけど、
原典のこの第十三回目では
「赦すまじき玉梓を助んといひし口の過」と言っている。

「赦しちゃいけなかったのに赦した」ってこと、それがダメだったということである。

【伏姫】ええ〜!?
【玉梓】だが一理ある。
【伏姫】ちょっと! ご自分のことですのになんですのその冷静さわっ あんなに怒ってたじゃないですか!
【玉梓】いや、いやな、私も煮えくりかえったわいな。この愚将! と何遍思ったかしらんわ。
 しかしまーよう考えてもみよバカ姫。
 赦す、なんて言わずにさっさと私の首を刎ねておれば、こんなしちめんどくさいことにはならんかったじゃろ。
 私だって、ぬかよろこびせずに済んだわいな。

 中途半端な優しさが、一番人を傷つける。
 そうではないかえ。

【伏姫】……。
【伏姫】なら。……ならやっぱり、
 わたしはあなたを助けないと。
 八房と共に、山へ入ったように。
【玉梓】……は?
【伏姫】だって、一度でも赦すと仰ったのだもの、お父様は。
【玉梓】……そういう風に言えるなら……。
 怨霊のこの私を、髪の毛一本残らないほど、完膚なきまでに潰すと言う風にもまた、言えるのであるぞ?
【伏姫】潰す? どうして?
 わたしもそうだけど、あなたはもう、死んでるじゃありませんか。
【玉梓】……。死んでいる奴に、何が助けるだ。
【伏姫】わたしも死んでいるから、あなたと同じ所にいるから、あなたに手が伸ばせるんです。
【伏姫】いけませんか?
【伏姫】少なくともわたしは、ここの八犬伝においては、そうありたいんです。
【玉梓】……。
 好きにしろ。
 ……ほんと、父に似て愚かな奴だよ、お前は。
【伏姫】はい^^

【大輔】……なんか……某(それがし)、ゲストなのに、おいてきぼりにされてるような……
【伏姫】あらまだしばき足りませんでした?<●><●>
【大輔】ヒイッ!!

義実が山に入らないまま伏姫がその一生を終えてたら彼女はただの犬の妻だった。
けれども伏姫のお蔭で八房は菩提心を起こせたのだ。
そのことを知らせる為に役行者様は現れたのだろう……と義実。
「遺書に描かれた神童が言うには、親と夫に会う、とのことだった」
「親は即ち儂……そして夫とは大輔、お前のことだったのだよ、きっと」
「誰を咎めるでもない。また誰を恨むでもないよ。弦が強く張れば必ず弛む。
 物事が極まった時かならずそれが止む時が来る」
「だから……」
「もういいんじゃ。もう、もう」
「きっと、こういうことは、ないんじゃから」
 ポジティブシンキング、義実。ちょっとしんみりきた。

さて霊珠パワーはこの時からあったのね、伏姫一時蘇生!
こっから超訳。

【伏姫】鉄砲に撃たれて死んじゃってたなら罪滅ぼしになったのに!
 それも叶わないでこうしてこんな姿見せて、おめおめとどこに帰れるっちゅーねん!!
【玉梓】うわびっくりした! ここで言うんかい!
【伏姫】あと許婚?? 婿殿?? のことなんかそっちが勝手に考えたことでわたし全然知らんし!
 こゆとこでも罪かさねてんかこのバカ親父!(※そこまでは言ってない/何故か関西弁まじり)
 よしんばそういう仲がわたしらにあったとしてもそれに逆らって八房と山に入ったわたしはめっちゃ罪やん!!
 不義! ふぎ! 女にとってこれはめっちゃ不義やないかお父ちゃん!!
 あと八房殺したのが大輔ならわたしにとってこよなき讐!!! オットノカタキ!!!
【大輔】うううごめんなさいごめんなさい
【伏姫】……八房も、大輔も。
 ……わたしの夫じゃないわ。
【伏姫】……独りで生まれて、独りで帰っていくのよ。
【伏姫】……人間はみんな、そういうものでしょう?
【玉梓】だが一人では生きていけん。
【伏姫】……。
【玉梓】お前の傍には八房がおったじゃろ? お前は決して独りではなかったさ。
 八犬士達が、そうであるようにな。
 ……ったく、この手の台詞は私が言うことじゃなかろーに。
【伏姫】そう、そうね。
 うん、まったくそう。
 ……ごめんなさい。
 ありがとう。

【大輔】……ああこれが百合空間ってやつなんですかね……ボソッ
【伏姫】まーだしばき足りませんでした?<●><●>
【大輔】ギニャアア!

と言うようなドラマを勝手に拵えて。
でも伏姫の言った「この身はひとりで生れ来てひとりぞ帰る槻出(死出)の道」って言うの、
すごくさ、何もかもを突き放した言葉で、強くて、孤高で、読んでると泣きたくなるんですよね。
おーねがーいー ひーとりーでーいーかなーいーでー♪
あっ、ちなみにここの伏姫の台詞は、実際はすごく流麗な美しい文章なので、
こんな超訳を信用しないでぜひ原典を読んでみてください♪
(超訳なのはあくまでこのぺーじがメモでしかないからだ!)

伏姫曰く孕婦の新鬼は血の池に沈むんだって。雛衣も妊娠してたら沈んでいたのだろうか。
「宿れる胤をひらかずは、おのが惑ひも、人々の、疑ひも又いつか解べき」
「これ見給へ」
この“おのが惑ひ”ってのを伏姫の小説ではどうしようかなあ、とか考えている。

そして伏姫切腹!! 帝王切開だよ!!
数珠がふわり上がって、百珠残して八つの大玉は八方に散る!
八犬子、走る――!!


そして、始まる。
八犬伝の、夜の、世界――


「よかった……。
 あんなに、きれいなのよ。あなたは見えて、いるかしら?
 ねえ、わたしのなかには、何にも恐ろしいものなんてなかったの。
 大丈夫……わたしの子供は、
 あなたの子供は、決して、悪いものなんかじゃないわ」

 だから、大丈夫。
 大丈夫よ、玉梓。

「こんなに穏やかな気持ちになったのは、いつぶりかしら」
「お願い、連れて行って」
「あなたの、ところへ」


【玉梓】ぎゃーっなんじゃこのクッサイ芝居わーっ!
【伏姫】それなりに脚色を交えて再現してみました♪
【大輔】男がどこにもいない……
【伏姫】おら、おらで、しとり、えぐも。
【玉梓】それ八犬伝じゃないし宮澤賢治だしっ

「こゝろ言葉も女子には似げなきまでに逞しき、最期は特にあはれなり」って言う文見てほんと伏姫イケメン説主張したくなった。
というか。法華経の竜女のことを考えるなら伏姫は変成男子になっているはず。
つまり、男子。女子にして男子。aikoのライブのコーレスで言うとそうでない人!(一部の人にしかわからないたとえ)
陰にして陽。もやもや。ここらへんはすごい書きがいのある考察とか出来そうですね。
と言っても伊井暇幻氏が確か既にいろいろ書いてたような気がするんですけど…伏姫のセクシュアリティーのとこで

ところで。

【伏姫】挿絵の私の後ろにいる女のひと誰ですのん?
【玉梓】知らん。
※ちなみに挿絵には伏姫の腹から出てるもやもやの中にワンコが描かれている

をとめ遣い? をさめ遣い? というか……一人首が取れてるように見えるのがなんか怖い。

【伏姫】つっぷしてるらしいんですけど……
【玉梓】あーこれはボキッといっちゃってるかもわからんのー
【伏姫】さすが首切られた人が言うと違いますわね!
【伏姫】果たして! この二人の正体は? 次回へ続く!
【玉梓】今回えらい長かったな。巻いてないんだな。
【伏姫】なんてったってわたしの大往生の回ですもんで(>▽の)
【玉梓】大往生……??
そんなわけで、この辺りを取材して小説書く予定もある故にあれもこれも拾いたくてもうほんとに大ボリュームになっちまいました。
削る美学を身につけなきゃ…
(以上2013/02/22まで)

巻之二 第十四回「轎を飛して使妾渓澗を渉 錫を鳴してゝ大記総を索」○
【伏姫】ところで思ったんですけど。わたしが死ぬまで言ってみれば13話あるわけですよね。
【玉梓】それがどうしたよ。
【伏姫】つまり……アニメで言うなら1クールですよ!
【大輔】ということは犬士列伝はいわゆる「二期」に相当するということですか……
【玉梓】やけに長い二期じゃの。ということはこの第14回は二期の第一話ということか。
【伏姫】あらら男くさい奴らしか出てなくてさっそく視聴切られそうですわね! 何せヒロインが死んでますからね!
【大輔】某の旅の始まりなのにー( ;∀;)
あだしごとはさておきつ、ゲストは第13回に続いてゝ大さまこと大輔です。

伏姫のあとを追おうと大輔もせっぷくーーー
まてまてまてい! 勝手に切腹するのはゆるさん、わしが斬ってやるう! と義実が斬ったのはもとどりだった……断髪!
【伏姫】……この時に死んでおけばいくらかラクでしたわね?
【大輔】素で言わんといてくださいっ!?

僧侶として生きろ、と義実の命。そうだよ、あんたまで死ぬことない。生きてることが大事だよ。
【玉梓】大事じゃぞ?
【伏姫】大事ですわよ?
【大輔】あのネタと言ってること逆じゃないです!?

大輔、犬にも及ばぬ我が身、犬の字を割いてゝ大という法名に。大輔の大も兼ねてる。
八房は「一つの尸八方に散る」を意味しているとの義実の講釈(こういうの好きだな)
百珠の数珠をゝ大に与える義実。八つの珠を取り戻すまで、安房には帰らない……

さてこの後どうすべ? な男三人。
山下る? あぶないし。いやいやいや伏姫だって一年ここにいたわけだし男三人ここにいなくてどうすんのん、ってかこの議論も女々しいってここに魂があるなら伏姫に笑われるだろう。
なんかほんとに、伏姫って変成男子という扱いよの……まあ男らしいからね。イケメン! イケメン!
とりま夜をすごすべ、と思ってたら城からの使いが川の向こうに来ているみたいだ。火急の使い? 五十子からの?
専女(おさめ)の柏田。カエタ。曰く、五十子「あなた! 富山は危ないから早く戻ってきて!」
……というところにまた次の使いが来る。
梭織。サオリ。廿に足らず、ということは十代。まだ若い。少女だ。彼女が伝えたのは五十子の死だった!
【伏姫】挿絵で泣いている方が梭織ちゃんですのね

伏姫も死んでるわけで……姫様ァ、と泣く二人。
【伏姫】女を泣かせるなんて、わたしってば罪な女〜♪
【玉梓・大輔】……(-_-;)

この柏田と梭織、ググっても伏姫屋敷さんか海南人文研究室さんしか出てこない。あと館山市の南総里見まつりの配役とかそういうの。ここでは五十子の侍女ではなく伏姫の侍女と言う扱いになってる。
さて伏姫屋敷さんの考察では五十子の死が伏姫に母性を与えたと書かれている。この二人の女は名前からして伏姫にアマテラス性を与える役割があるのと同時に女性性を与えるものでもあるのかな……とふと思ったりする。
この二人って読み落とすには惜しい二人なんだよね。すごく意味ありげでさ、馬琴さまが何の意味もつけず出すわけないと思う。
二人が老女と少女であり、母の言葉を伝えにくる、と言うのも……意味ありげだ。
変成男子もかくや、な伏姫に新たに女性性を授けにきたのかもしれない。少女・母・老女。伏姫はあらゆる方面で女として完成し、なおかつ変成男子へ変身を遂げたと言えるかもしれない。
いわば陰と陽の合致である。人と犬。伏。彼女の名が真に体を表すのなら、こうした陰陽の合致を説いているのかもしれない。
そういえば……五十子と伏姫って命日が一緒になるのかなあ、これ。
それから二人ともちょっとものものしい格好? であるようにも読める。それも何か意味があるのかもしれない。

お墓は質素に。八房の墓は犬塚と呼ばれるようになりました。
【伏姫】さりげなく伏線! あっ、伏!

大輔もゝ大さまにクラスチェンジし、法華経をよんで四十日くらい供養供養。
四十九日の法要にゝ大さま呼ぼうと思ったら、もう出発しちゃってたよ……この辺りかなり最後と似てるね。木こりに伝言を託すあたりとか。
さっきも言ったけど……八玉が揃うまで……安房には帰らないっ!

【伏姫】ねこのっもりーにーはかえーれない♪
【大輔】って歌うのがそれなんですか! 犬じゃないんですか!
(谷山浩子「ねこの森には帰れない」より)

ちなみにいつ戻ってきてもいいように富山には観音堂が出来ました。伏姫のことも八房のことも伝えているし遺書も納めているよ。
ちなみにここは今でもあるよ。現代にもあるのかな。
馬琴さまメッセージは文外の画、画中の文について。霧が晴れたこととか、柏田と梭織が先に登場していることとか。挿絵は八犬伝において本文と同じように尊重せねばならないということなんだろうね。この点現代のラノベとかにも通じるところがあると思います。

巻之三 第十五回「金蓮寺に番作讐を撃つ 拈華庵に手束客を留む」○
さあ伏姫物語も終わっていよいよ犬士列伝の幕開け。まずは信乃のお父さん番作のエピソードからスタートです。こっからは省略の美学を意識しながらすいすいっと書いていきたいと思います。伏姫と玉梓によるオーディオコメンタリーもちょっと我慢。もっとこうスパッスパッと読んでいきたいのだ!

まず冒頭に馬琴さまによる年号や時系列の注釈。応仁って応仁の乱が有名だけどたった二年しかなかったんだね。
時系列は巻戻り、再び結城合戦のところから。番作と匠作親子。匠作は春王安王を助けるつもりだけど番作には足利の宝刀である村雨丸を託す。敵にとられないためである。親子ともども城を脱出するのであった。義実と対比するならば自分も死ぬ! と言っていた義実に対し戦地を脱し生き延びて母を養おうと言うのが番作。
「父子もろ共に死地に就なば、名聞に似て君父に益なし」 孝の犬士の父親である番作、まさしく彼も孝の人であった。
思ったんだけど信乃が主人公(及び伏姫属性)なのって番作・匠作親子が義実・季基親子と同じ所(結城)にいたからというのもあるかもしれない。将と臣の違いはあるにしろ。

春王安王は悲しいかな首を落とされることに……ここの兄弟の会話がすごく泣けるのだ(´;ω;`) 周りの武士達も涙を禁じえない。
そして公達の首が落とされた――ら、匠作、襲いかかる! でもすぐに腕や首を斬られ――って時にまたまた謎の人物登場!
それは番作だったッ! 村雨丸ここで初めて抜かれる! 伏姫屋敷さんが夜の刀と書いていたけど初登場のここでも「十六日の月見えず、如法暗夜となりしかば」なのだ。水光ったりしないのかね。ところで匠作の首咥えて名乗り上げてるらしいんだが番作はどうやって声出してるんだろう……挿絵も首咥えてるし…ワンピのゾロで言うなら心意気だろうか…

番作、父と公達の首を持って逃走逃走。いつ追手がくるかわからないから心は休まらない。
とある田舎の寺・拈華庵に辿り着いた番作は新しいお墓の隣に三人の首を埋め埋めするのであった。これが掘り出されるのはずーーっと後の話である。それにしても馬琴さま(作者だから当然とはいえ)よく覚えてたなあ…
そしてこのお寺で信乃ママの手束さんと出逢うのだった。エンダァァァ(早)泊めてくんろ、な番作。いやいや私もここの一時の留守番してるだけでして寺の主じゃないですし…な手束。まあまあ困ってる人を助けるのが出家のすることじゃんって入ってくる番作。そして何かあったら俺が謝るからと飯も食べる。八犬伝グルメ描写も初登場である(そうか?)
食っても問題ねえべ、な番作って結構ずうずうしい……んでこんな傷だらけなんだし何も出来ねえし誰かが見たって問題ないし、と女のひとがいるのに一つ屋根の下ちゃっかり宿もとるのだった。次回へ続く。

巻之三 第十六回「白刃の下に鸞鳳良縁を結ぶ 天女の廟に夫妻一子を祈る」○
挿絵の蚊牛の悪人面……
っとフライングしてしまいましたがそうです、山賊悪僧蚊牛に襲われそうになってる手束さん。キャーッ><
蝸牛が持ってるんは菜の刀と書いて「菜刀」(ながたな) 上方落語に「菜刀息子」(ながたんむすこ)という泣ける珍品があるのですがそっかー関東でもそう読むのか。というか上方が撥音便化してるのかな。と八犬伝関係ない注釈。まあ個人的な注釈ぺえじですんで。

やってやんよな番作VS蚊牛。ドッタンバッタンジャキーーン!!(何) と包丁刺す。WINNER番作!
とここまでは良いのだけど手束が蝸牛の妻だと勝手に思いこむww 言いがかりww 言いがかりや番作さんww 話を聞けww 察しちゃれww ははあ信乃の人の話を聞かない所(主にネタにおいて)はこの人譲りか…いや信乃はどっちかと言うと空気読まないのか

ちょっとまちんしゃーい! と手束ママが出したのは手紙だった。手束の声より文を信用するのか。
以下、手束の身の上話。手束の父・井丹三直秀は結城合戦にいた、持氏恩顧の武士でした。しかし死んでしまい、母も亡くなった天涯孤独の手束ちゃん。初七日と初月忌の為お墓参りに。でも坊主に懸想されちゃって……うういやらしい、お気の毒にな…。
で、そんなわけで私は潔白! 濡れ衣です! それを証明するまで死なへんど。以上「雄々しき少女の物がたり」でした。

番作の口から明かされる。実は! 番作と手束は親が決めた許婚同士だった! 運命の出逢い! エンダァァァ  あ、首を埋めた隣の墓は手束ママのママつまり信乃のおばあちゃんのお墓だったそう。二人は夫婦となって筑摩温泉へ行くのでした。湯治ってやつね。
ところで。番作が山賊の拠点になると行けないからって火事で燃えるようにしてきたってサラッと言うんだけどww
完全ww 犯罪臭するwww 悪の温床になるのを防いだわけだが、蝸牛の死体も燃えるわけじゃん? スマンちょっと笑った、ガチで笑ったw というか笑わざるをえん……如才ないなあこの人。この辺り信乃に受け継がれている…かも どうかな。

お話は二つに分かれて大塚村の亀篠の話だー 淫婦(たをやめ)ってまた出てきた。
【玉梓】えー、てことは私は亀篠と同類と考えられるわけ。
【伏姫】今更何を仰いますか。
でも玉梓が具体的にどう悪いことしたかとかは亀篠ほど描写されてないし情状酌量の余地は広いと思うの(玉梓厨乙。)

それはともかくとして、お母さんの看病もせず蟇六とラブラブ(?)してて遊び三昧。一方その頃安王春王の弟だった永寿王は成氏となって結城の戦で戦った人達に褒美を出そうということになっていた。ここにつけこんで亀篠蟇六夫妻は村長格へのし上がるのです。
一方番作の方は湯治してたのに足が不自由になってしまいました。そしてこの頃から苗字を「犬塚」と名乗ることになりました。
成氏のその噂を聞いてなんとか大塚村へ行こうとするのですが時間がかかってしまいやっと辿り着いたと思ったらごらんの有様なわけで。
村雨丸がこっちにあるからまあ番作の方がいくらか正しいのではあるけどその為に姉と争うのもなあ……。と言うわけでひっそり村に住むことに。
大塚村の村民はみんな蟇六亀篠のことが嫌いだったので当てつけとばかりに番作達を手厚くもてなすのであった。野良仕事が出来ない番作の代わりに番作田なんてものを作ってここを世話したり、番作は手習いの先生をしたり手束はお裁縫の先生をしたり。
決して豊かなわけじゃないけど貧しいというほどでもない、ほどほどの生活が出来ていたのでした。
しかしこの時代まだ江戸弁なんてものはないだろうに(〜べ、とか〜だべ、とかなんだろうが)私の脳内では村民の言葉が江戸弁で再生されるのだった。

で、挨拶にこない番作に蟇六夫婦はイライラ。すぐ向かいに住んでるって言うのにね。挨拶もしん無礼者めさっさと村から出てけ(超訳)と言うあちら側に対しこっちには村雨丸があって裁判すればこっちの方が村長として(大塚姓を名乗るのに)相応しいってすぐわかるけどドヤ(超訳)と言う番作側。
ムムム、となる蟇六側だけど「毛を吹き瑕を求める」(八犬伝にちょいちょい出てくる言い回し。韓非子より。悪いところばかり指摘してかえって周りの反感を買い自分の首を絞めるようになること、という意味だと思う、個人的に)となりかねないのでここはぐっと飲み込む。ただし村ですれ違ったりしても互いに無視を決め込むのだった。

時は流れて。あっちゃこっちゃで下剋上な戦国なう、という昨今、番作と手束には子供が出来てもすぐ死んでしまう…滝の川の弁財天は子宝利益があるということで、お参りに。手束は三年の間日参を欠かしませんでした。
ある時時間を間違えてかなり早い時間に出きてしまった手束、テヘペロ☆ 捨てられた仔犬が手束の裾にまとわりついてくる。
可愛い。こんなに慕ってくる犬を誰が捨てたのかしら。犬は多産の動物、安産と成長のお守りに狗張子とかがあるのもそういう由縁。この子を拾わないでいけるものか。
そうひとりごちて犬を抱き上げる、と。

――南のかたにあいたいと、紫の雲たな引て――
――嬋娟たる一人の山媛、黒白斑毛の老犬に尻うち掛――

一部省略。そう伏姫!
ぽーんと珠を投げるけど取り落として犬のところに。見つからない見つからない。弁財天には似てなかったけどきっと子胤を授けてくれたのに、ああどうしましょう。でも番作は、その姫は犬にのってて、我が家は犬塚、私の名前は一戍、そしてお前は仔犬を拾った。こりゃきっと念願成就の兆しに違いない。それもそうネ、と手束なっとく。
程なくして手束は身重になり寛正元年七月の戊戌の日に男の子を安産にて出産。これが後の八犬士の一人、犬塚信乃なのです。

【伏姫】はいここでゲスト〜! いますっぽーんと生まれた八犬士が一人、犬塚信乃戍孝くんでーす!
【信乃】ええっまさかこんなところに呼ばれるとわっ!?
【玉梓】来てくれたとこすまんがもうこの回終わりじゃわ。
【信乃】しかも出オチも出オチ!?

信乃の話は次の巻で語られるぜい。
また信乃以外の七犬士は信乃みたく父祖のこと、家譜には触れずその人のことだけを書いていくのでその点ご了承ください。
というわけで次回に続く!
(以上2013/02/25まで)

巻之四 第十七回「妬忌を逞して蟇六螟蛉をやしなふ 孝心を固して信乃瀑布に禊す」○
ご無沙汰しました原典読書、再開と参ります。第17回ゲストは引き続き信乃です。
【伏姫】旅のお伴に八犬伝♪ 旅をすれば原典読書がすっすむ♪ すっすむ♪
【玉梓】いきなりなんじゃ……
旅先には八犬伝を。このたび名古屋へ遠征したのですが八犬伝持っていきました。道中読んでましたの。
旅行してる時なんか必ず読んでいるような気がしてですね。さて第17回です。

生まれた男の子は信乃、と名付けられました。
前の子達と違って長生きするようにーとか、二人の出会いの地だからとか、名前の意味を知ると改めていい名前だね、信乃って。
信乃誕生のお祝いの席の大塚村住民の描写が……村民、よく言えば素朴とか純朴とかなんだろうけど悪く言えば品がないよな。がさつだし。なんかこういう、時折挟まれる人間スケッチいいな。
それはともかく信乃は村のみんなに可愛がられます。女の子として育てると健康に育つということで女姿信乃ちゃん。いや〜昔は信乃のこともちゃん付けで呼んでたっけなあ。

で、面白くないのは亀篠・蟇六夫婦の方でして。男の子なのに女の子として育てるなんて、とdisってたり。でもそうdisっていても肝心のこの夫婦には子供がいないから余計憎らしいわけで。淫婦は石女が多いと書いてある。
【玉梓】私も孕まんかった。石女で悪かったわのー。
【伏姫】わたしは出来なかったけど出来ちゃった☆
信乃に対抗せんべく、大塚夫婦は煉馬家の家臣の子を養子として貰ってくるのであります。それが!?

【伏姫】はいそれではゲストのご紹介です!
【浜路】はーい皆さん人差し指を一本出してください♪
【浜路】はち・はち・はち・はち・はっけんで〜ん☆ 大塚のシンデレラと言えば〜!?
【伏姫・信乃】はまじぃ〜〜〜〜↑↑↑
【浜路】はい! くせっ毛は恋の命綱! 大塚浜路ですよろしくお願いします!
【伏姫・信乃】イエ〜〜〜〜イ!
【玉梓】なんだこのノリは……悲劇なのにむっちゃ明るいし…

ついでに言うとシンデレラな要素はどっちかってーと大塚の浜路より甲斐の浜路姫の方がそれっぽい。そして中途半端なももクロ夏菜子自己紹介ネタであった。
器量のいい子をもらってくるわけです。しかし、オマケでついてくる「永楽銭七銭」は「少なくない」って言ってるから子供は二の次でお金欲しかったんじゃないのこの夫婦って思う……最初から不憫だね浜路。
信乃の対抗馬なので亀篠は自分も今風なおめかしして華美に飾りたててちやほやちやほや。うーむこの感じ何かを思い出すと思ったらあれですよ愛玩犬。服着せられたり毛とか染められたりして無駄に華美な感じにされちゃう小型犬。ちなみに私の中で浜路はトイプードルのイメージ。
ところで対抗馬と書いたけど、考えてみれば犬山正月として生まれる前から彼女は「犬山家の跡取り争奪戦」との、道節に対抗する者であったわけなんだよね。いや結局道節が先に生まれるから戦いも何もあったものじゃないけど…
親の身勝手に翻弄される子なんだなって。そういうとこなんか切ない。

で、一方の信乃はというと女装しつつも男子らしくすこやかに成長。正直女装してていいのかってくらい。
手習いも剣術柔もやってて文武両道よ〜。馬はないので与四郎に乗るのであります。まんま伏姫のミニチュアな件。
手束が心配してやりすぎないようにねって言うのもお母さんらしくていいなー。つかの間の幸せの犬塚家って感じだ。
そんな信乃を賞賛する一方でふぐりなしw って笑われたりするけど、そんなつまらない奴らには取り合わないぜ、とツンとした孤高を気取る信乃。この辺りは小説でもちょこっと描写したような。

【浜路】でも、そんな気高い信乃さまのこと……浜路は、大好きでしたよっ!
【信乃】浜路……(ドッキュン

 ひしっ 二人抱き合い!(どどどざっば〜ん)←波が岩に砕け散るSE

【玉梓】おいそこ! 公共の場でちちくりあうの禁止!
【伏姫】いいじゃありませんか〜本編では浜路死んでるんですからここでらぶらぶしても〜♪

でも何で女の格好させられてるんだろう。という疑問はある。ま、もう慣れちゃったから今更だけど。こりゃ、後で信乃に説明されるからそれへの伏線だな。
さて、手束お母さんはだんだんと体の調子が悪くなる。信乃が薬を取りにいってる間の犬塚夫妻の会話がそこはかとなく泣ける。
信乃より先に生まれた子たちはみんな短命だった。だから信乃も短命なんじゃないか、お願いです、私の命はどうなってもいい、どうかこの子が長生きしますように……と祈っていたことを明かす。手束さん涙。
だから、もう私の看病なんかしなくてもいいの。そんなこと言うんじゃないよ、子のために身代わりになりたい、なんてそんなことが叶うなら世に子を亡くす親はいない……と番作。はあ、涙ほろほろ。
それにしても信乃は遅い。道草するような子でもないのに、と外へ出てみたら薬が戸外においてある。信乃はきっと遊びにいったんだろう。お腹が空いたら帰ってくるだろう、と最初はそう思っていたけど、それにしても遅いっ。番作、足が不自由じゃなかったら走って探しにいくのに……

そこに犬塚家の戸を叩くのは後ろに住んでる糠助おじさんだった。信乃を抱えてるよ?? 何でも不動の滝で水ごりしていて仮死状態になってしまったとか。明日は遊びに来いよ、と言ってくれる糠助おじさんが庶民的だ。あくまでマイペースな気がする。
孝行っていっても程があるぞーと番作説教タイム。信乃、水垢離をした理由を話す。これもお母さんの為だったのだ……なんだかオー・ヘンリーの「賢者の贈り物」を読んでいるようだ。
今日死んだとしても私ほど幸せな親はおらぬよ、と手束さん。番作、ここで自分達のルーツを全て信乃に話す。伏姫(山媛)の授けた珠のこともここで初めて話す。珠のことは誰にも話さなかったらしい。
信乃、その珠があれば母が助かるんじゃ……と思っても見つからず。そのまま手束は永眠してしまいました……。

お葬式でも信乃は女姿だったのだけどそれを笑われる。普段からそうなんだから別に笑わなくてもいいのに、デリカシーないな村民って。
「私のことを笑われるのはいいし、女装が嫌なわけじゃない、でもこのことで親が謗られるのは悔しいんです!」そんな風に怒った信乃は番作に女装する理由を問いただし、番作理由を話す。
真相を知った信乃は、母の慈しみはかくまでにありけるか! と感じるのでありました。

巻之四 第十八回「簸川原に紀二郎命を隕す 村長宅に与四郎疵を被る」○
番作は手束さんが亡くなってからますます廃人に磨きが掛かりまして(いやだな)
これまで村民がなにかと面倒みてくれたから家族三人やってこれたので、その恩返しというわけで農業書をしたためるのでした。評判がよく村民の間で回し読みして書き写されるけど、ひきろくには返してあーげない。わあ、いじめだいじめだ。あからさまだ。ちなみにこの頃、一介の農民に過ぎない番作さんが農業書を書くなんてこと果たして可能なのか? 的な考察を海南人文研究室さんが書いています。

さて。与四郎は12歳にもなるのに全然老犬らしくなく、むしろ気力いよいよ増して、村の犬のボスに君臨しております。あるよね近所の犬のヒエラルキーって。年功序列とかもあったりさ。私の家の犬が亡くなる前の数ヶ月、私が五歳の頃からいた長老犬が亡くなっていたので近所で最高齢だったかもしれません。ま、そんなことはどうでもよくて。だが大型犬は可愛いことは主張させてけろ。
大塚家でも与四郎に対抗して犬を飼ったのだけどことごとくかみ殺される始末。ヘヴィだな。なので方向転換。猫を飼うことに。ぶっちゃけると私は猫派だ。キジ毛の猫なので紀二郎。わりと安直なネーミングだけど与四郎も安直だ。浜路や亀篠にかわいがられます。

さて猫の恋の季節は紀二郎も例外でなく。如月の末なので今でいうと三〜四月頃かなあ。友猫と喧嘩して怪我を負った紀二郎はうっかり与四郎のもとへと転げ落ちてしまい……! 八犬伝は人間同士のバトルだけじゃなくてよ、与四郎VS紀二郎!!ファイッ
でも与四郎には勝てるわけもなく。でも犬と同じ大きさなら圧倒的に猫の方が強いらしいよ。そらそうか、犬と同じサイズの猫ってそれライオンや虎だわ。と、横道にそれましたが、紀二郎無惨……ああうう、猫派の人は読んでてつらいわな…ていうか別に猫派じゃなくてもつらい… 与四郎、さっさと逃げちゃう。
さて事件を知った蟇六と共に現れたのは……。

【伏姫】はいはい〜今回のゲスト! のちの犬川荘助こと、額蔵で〜す!
【額蔵】どうも〜〜!
【信乃】……え? 荘助どこにいたの?
【額蔵】やだなあ信乃さん、ほら、ここに記述があるじゃないですか

 蟇六は縁由を、聞くとそがまゝ棒を引提、額蔵といふ小廝の、年十一二になるを將て後走に來つれども、

【信乃】……モブすぎてわかんなかった。
【額蔵】まあそう言うんじゃないかなってちょっと思ってましたよ!

そうです。初登場は正直モブもいいところだと思います。道節や現八や毛野ちゃんや親兵衛の華々しい登場に比べたら…

【額蔵】どうせっ どうせ俺なんて!
【信乃】よしよし。

話に戻ろう。蟇六怒りMAX。犬までもバカにしてくさって!! 目の前であの犬を殺さん限りは腹の熱さがおさまらんわーーー!!
わかる!(腹の熱さがね)あの犬連れてこんかーーー!! で、蟇六は帰っていく。
紀二郎の亡骸は額蔵が持っていきました。道中ぶつくさ怒りをぶちまけていく。橋の名前の起源。猫俣橋。ここ実在するのん?

外は犬のテリトリーなんだしそっから自分で入ってきた、死地に入ってきたなら殺されても文句は言えないと思いまーす。という番作の言い分。勿論、犬が家に上がり込んだらその犬がぶっ倒してもいいケドー。勿論蟇六は大怒りである。
が、しかし……ん……? ちゅーことはーーー!?!?!?!(れにちゃん風)
与四郎を合法的(?)にぶっころしちゃおう作戦!! を提案するがそこに糠助おらんで。アッ消えた! この忽然と消えてるのギャグかと思ったw 謀は密なるを良しとす。子供は足の速いもの。ということでパシリの星、額蔵追いかける。

【額蔵】パシリの星って……

しかし。額蔵は年に似ず才長けているけど、能ある鷹は? そう爪を隠す。
主人夫妻の嫉妬心をうわあ……と思いながら表だって逆らうことはせず、この日も馬鹿だなあ。。。と思いながらもとりあえず行ったフリして
「糠助さんは去年の秋の債務もありますんで村長を敵に回すとは思えません、そのままにしておいてもいいと思います。
 犬のことだから出歩くことだってありますしそん時がチャンスじゃないかなーって」と言っておく。
逃げおおせた糠助、犬塚家へ。「犬さえここにいなければ」ってんで。

【伏姫】あーなーたはー いーぬーをーすーてーにーゆくー♪

谷山浩子「犬を捨てに行く」より。イラストも描いたね。この曲は何度捨てても戻ってくる犬の曲なのです。そう! 与四郎は何度捨てても糠助より先に戻ってくるのだったー! ああ〜何かあはれで切ない……ていうかこんなエピソードあったの忘れてたすw ゆーかさんすみません!
ところでこの捨てたのに飼い主より早く戻ってくるっていうのは桂文枝師(当代)の「愛犬サニー」を思い出す。聴いたことないけどそういう噺だったのです。ツイートしたときは愛犬チャッピーて書いちゃったけどそれは昇太さんのだ。で、落語のこと思い出してたらすぐ(地名として)宮戸川が出てきたのでウォウッ! て思った。しのはまで宮戸川パロみたいなあ。

この後、信乃の「ぼくのかんがえたさいきょうのけいかく」的な計画が実行されるのである。

ぼくがおじさんのいえのまえでよしろうをせっかんする!

おじさんとおばさんはそれをみてうっぷんをはらしてくれる! 父上もあんたい!

いっけんらくちゃく!!

【玉梓】本気でヴァカか!? ガタッ
【伏姫】きゃっ! つば飛んできましたわ〜も〜えんがちょ〜 フキフキ
【伏姫】ん? あらこれなんかデジャブ。

そう、第九回の義成の作戦を思い出したのでしたん……。馬鹿に相談しちゃいかんやろう信乃よ……。
思えばこの頃から肝心なところ抜けてる奴だったのかもしれない……
あと、手束の為の水垢離エピにしたって自分の考えしかなくて、いつだって自分が最上だとしか考えてないから起こしてしまった感じ。
浜路見捨てて行ったのだって、家の為みたいなもんで、自分のことしか考えてないわけじゃんやっぱ。
それはその時が一番いいと思ってて、失敗だった、って終わって初めて間違いに気付く。後悔する。大きな失敗によるビンタを喰らう。
一見立派な人物のようでいて、その実、私達に非常に似てる気がする。
本当は立派でも何でもない。私達と同じ。感情移入出来るような。
だから主人公、なのかな。なんて思ったのだ。

ま、話に戻って。そんなわけでその計画を糠助と実行するわけだけどまあ上手くいきませんわな?与四郎びっくり! して違う方向へ逃げて大塚家に入ってしまって、蟇六はしめた―――ッ!!! ってんでフルボッコタイム。あ、あああ…… 信乃は助けようとするけど糠助が連れて強制退散。この時の糠助の描写わろす。き○たま! きん○ま! どんだけ道化なのよ。
で、番作のお説教タイムその2。まんま私が思ってたことを言う。でもあっちが与四郎をおびき出してのフルボッコ騒ぎだったらすごい悔しかったけど信乃が引き起こしただけまだよかったよ。
さて与四郎は帰還したけども息絶え絶え……回復の見込みはなさそうです。
一方蟇六は上機嫌。額蔵の方は騒いだ振りをしただけであっておっかけなかったし、蟇六のことを暗に笑っているのでした。つばさ版八犬伝の荘介に近い感じがする。

さて、蟇六夫妻のわるだくみ。信乃に加担した糠助の弱みにつけこんで村雨丸を手に入れよう作戦であります。
そも、村雨丸を狙う理由、ポイントを箇条書きで。

・蟇六は亀篠の夫というだけで後ろ立てがない。
・成氏は両管領と仲がよろしくない。
・大塚家は成氏側である。
・とゆことは両管領、両管領に従った陣代の大石氏との関係は最初から微妙である。
・そこで村雨丸を献上すれば安泰ではないか?

糠助呼んでこい! 一体何をしようっていうの? 次回へつーづーくー

巻之五 第十九回「亀篠奸計糠助を賺す 番作遠謀孤児を托す」○
糠助、家に閉じこもってビクビク。亀篠に呼びだされても引きこもってたけど女房や(再婚したのね)使いの人に引っ張り出されてきた。んで、亀篠はとても優しげ〜〜で。んまぁありがちでんな。与四郎は御行書を「ばらりずん」と食い破った、とのこと。犬の飼い主は罰を免れん、村雨丸を差し出せば万事OK!ということを番作に伝えにいきんしゃーーー それにしてもこん時の糠助の退場もおもろい…

【信乃】なんかさ……このぺえじにおいて現八がバカって言う理由が何となくわかってきたよ…
【額蔵】遺伝的なものだったのですね…
【現八】なになに? 何か言った!?
【伏姫】あっー! まだ出番じゃないのにブース入らないでくれませんことっ!?

で、番作はそれを聞いて冷静に問う。その御行書読んだの? いやぁおら無筆だぁ、わっかんねえっぺだ。そら亀篠蟇六の謀だ、心配いらぬいらぬ。って言うけど糠助はこれに反発する。そんなこと言って! みたいな。
もしかしたら、自分の過去を思い出していたのかもしれないねえ。馬鹿だからとかそう言うんではなく、真心で言ったのかもしれない。仁に近き人なのだから。いや、きっとそうっしょ。亀篠に「百遍大赦の時にあふとも、助かりがたき命ならずや」って言われた時糠助は、伏姫五十子三回忌の大赦で許されて安房を追放された時のことを思い出したんじゃないかと、ふと思ったのよね。

とにかくいい返事聞かせてくんろ、なるべく早くにの。と一旦帰る糠助。
この後の信乃と番作の会話は第17回の手束と番作の会話みたくてとても良い。
これが最後の会話、最後の家族団らんになるなんてねえ……。
そしてここで村雨丸登場である。信乃に元服を促し、自らは死ぬと宣言。しかも信乃は亀篠夫婦に預けると……そ、そんなのって! そんなのってないよ! やめて父上! な信乃。諦めないでよ! 父上ぇっ!
しかし、しゃらくせぇ!! な風に(違うだろ)信乃を一喝する番作。
ずっとずっと、死ぬ時を逃して来た。結城の戦いの時もそう。母の今わの際に会えなかった時もそう。それなのに、それなのにずっとずっとだらだらと生きてきた……。
多分番作は「やっと、やっと死ねるのだ」って……そう思ってたのかもしれないなあ……。

やめてえ!! 離せぇ!!! くんずほぐれつの末に、嗚呼、番作、切腹――!!!


「ち」
 ちち、うえ。
 そう呟いた声さえも、同じ「ち」の音なのだから忽ちに血に塗れてしまいそうだ。
 それほどの生臭さの中、少女は、いいや少年は無音の慟哭に目を押し広げていた。だくだくと老体から血が流れる。口からも泡に交じって血が流れる。最後に突き刺した喉からも血が吹き出ている。ああ、父は確かに生きていたのだ。そんな当たり前のことを、今の状況から逃れたいとでも言うような、ある意味で見当違いなことを彼は思う。
 そしてもう、戻れない。
 流れていく。流れていく。ゆく川の流れは絶えずしてまた元の川にあらずならば人の血の流れだってそうだ。もう戻れない。少年をこの世に繋ぐ大切な肉親は、もう戻ってこない。
 秋風が寒々しい声をあげて吹いていった。永久の孤独が、忽ち、少年を頭から飲み込んでいった。


まあそんな風に信乃、血まみれであります。( ゚д゚)ポカーン
で、惨殺シーンを見て糠助びっくり仰天、ほうほうの態で蟇六宅へ。
ああ、私がもう少し大人だったならこんなことには……自分も死のう!! って言うここの信乃の台詞は泣けるので是非原文を読んでね。あっ、村雨丸血のり全然ないすごっ。って風に言ってる信乃って正直余裕あるよね。
そこに与四郎がやってくる。弱り切っている与四郎。もうぼちぼち死のうって感じだけど村雨丸で介錯してあげようか。それを了承するように首を差し出してくる与四郎である。
「彼犬を獲てわれ生れ、彼犬ゆゑに父を喪ふ」と信乃は言ってるけどその辺りを誇張して書いたのが拙作「蒼天に吠える獅子」のセクション1にあったりする。全ての元凶は自分だねってこと。「そのはじめを聞、終を思へば、愛すべく又憎むべし」

「如是畜生、発菩提心!」

こう叫んで斬るぴんく先生の「八犬伝」のシーンが印象的。頭に残ってる。

ポーン、と何か出た! 孝の珠出現でござーい! ああ、母上の言ってたやつだ……でも今更こんなの出たって……

ポーイ→戻ってくる→ポーイ→戻ってくるポーイ→戻ってくる 無限ループ(^O^)!!!

たぶん、怒りを表す漫画記号(出せない…)がついてるって読んだ当時ブログで書いたわw ああ、もしかしたらこの珠のお蔭で与四郎は年とらなかったのかも。などと思いつつ、だからってなー、意味ないわなー、と完全諦めムードな信乃。
切腹だ! 服を脱ぎ脱ぎ。ってとこで左二の腕に出来た牡丹の痣を発見するのである。手習いの墨で出来たようなそんな即席のもんでない。
人死ぬ時にはあやしみ(妖怪にそうルビが振ってある)を見る。「皆是おのが惑い(まよい)にこそ」って、「おのが迷い」って伏姫も言ってたよねえ。
「どーせ死ぬんだから! 痣だろーがホクロだろーがどうだっていい!」
さあ死のう今死のう今死ななくていつ死ぬの今でしょ!(またネットスラング使っちゃった)って勢いづいてたのに待てー! ってんで次回!

巻之五 第二十回「一双の玉児義を結ぶ 三尺の童子志を演」○
その自殺ちょっとまったーー!と駆け込んでくるのは糠助、そして亀篠夫婦。
ここまでしなくとも、といろいろかきくどいてみせる亀篠に何かを思い出すと思ったら第7回の安西である……かーっ! かーっ! 足どんどん踏みつけたくなる。蟇六、ここで浜路と夫婦にして信乃に大塚を継がせると約束。
ここで信乃の賢さがでてる。信乃はただ「太刀」といったのに蟇六の方は「宝刀」と言い、そう言ったくせに「俺は知らない」と言ったのである。これは、父上の先見もあながち間違ってないかも……。
でも、絶対に誰にも心を許すものか。というくらいに孤高に孤高を極めんとするひとりぼっちの信乃のもとに使わされたは額蔵である。もちろん信乃は額蔵にさえ気を許そうとはしない。
でも、額蔵は他の使用人とはちょっと違う。こいつ、いい奴かもな……だから、そんなには疑わないようになる。
そしてついに二人が宿世の兄弟であるとわかる時がくるのであ――その前に信乃はもっと清潔なくらしを心がけるべきだと思いますww!! 伏姫屋敷さん「むさ苦しいぞ、信乃!」参照!

【信乃】えーでも夢中になると寝食忘れるっていうじゃん。ならお風呂も忘れると思うんだよね。ぶっちゃけ入浴ってめんどk
【伏姫】きゃーカットカット!!
【玉梓】ひいい人気キャラが言うような台詞じゃない!
【信乃】いやお風呂自体は嫌いじゃないけどお風呂入るまでが長いじゃん?
【玉梓】いつから中の人の思いをキャラが代弁するコーナーになったんじゃここは!

それを見かねた額蔵がお風呂をすすめる。その時彼の痣を見て、自分で見ることは出来ないけど……と背中に同じような痣があることを打ち明ける。彼は生まれつき痣があったようだ。それから、梅の木のもとに埋めてあるのはなんです? と訊く。与四郎を埋めたんだよ。

「……そうでしたか」
「……そりゃあ、紀二郎がやられちゃったことは、残念でしたが、
 だからって、あんなにひどいこと……うちの主人、何も誇ること、ないですよね」
「……俺も、信乃さんに、他の人と同じで与四郎をいじめてたって、思われてるのかな」
「でも、俺は何もしてません」

 ……そう言っても。
 信乃さんは、ただ、曖昧に笑うだけで。
 俺が何を言っても、特に深く追及してはこなかった。
 俺は、すこしだけ……。
 いや、ううん。結構、悲しかったりした、わけだけども……。

で、着物をぱんっ、と振るうと、ころころころ……と転がる孝の珠。まだ警戒している信乃は特に由来を詳しく話すこともない。そのことに落ち込んだ額蔵は、守り袋から義の珠を取り出してみせました。そこで信乃は警戒を解き、「宿因の致す所、一朝の縁にはあらじ」と珠の由来とこれまでのことを話すのでありました。で、額蔵も自分のことを話します。
北条伊豆の荘官・犬川衛二則任の長男として生まれた額蔵こと幼名を荘之助。胞衣を埋めようとしたところこの義の珠を発見。
やあやあこれは祥瑞と皆は言うけど、荘之助の背中には不吉そうな痣が。そこで関帝廟でおみくじを引いてみるわけ。
漢詩? が書かれてたけどそのうち三句はあんまりいいことじゃない。でも結句に幸いありとみた。
この子は、十二、三まで多病か、何かよくないことがあるだろうけど、でも……玉兎交わる時、満月……十五の時に、きっと幸いがあるでしょう。と読んでみた荘助パパ。そこで荘之助と名付けられたのでやんす。荘、は荘盛(さかりさかん)からなんだって。信乃の時も思ったけど名前の由来や意味が明らかになるエピソードはいいね。

こっからは簡単に書いてくよ。
成氏 鎌倉から許我へ。右兵衞督政知、伊豆北条へ(寛正二年)→苛政をしく!

それを諌める荘助父。←殺されんで〜 →なんてことだ… 家族を残し自殺。(寛正六年)

犬川家没落。。。(豪家といはれたる犬川の水枯れ果てて…)

「……そっ、か」
「同じ、だったんだね。わた……おれたち」
「父上、どっちも、自殺で」

で、犬川母子はあちこちを転々する内に季節は秋から冬へ。安房の蜑崎十郎の元へ行こうとしたけど時は戦国、安房行きの通路は絶えていた……。行徳から上総に渡す船があるということで行徳に向かう途中、賊に金を取られ、宿を借りることも出来なくなって、ここ大塚村の村長宅へ辿り着いた……のだが、御承知の通り性悪村長である。宿貸さないよ、ヘッと母子を放置。
もともと体の弱い荘助母は霜月二十九日、酷寒の中で息絶えたのであった……。荘助……(´;ω;`)
ひどいのは大塚夫婦である。里見家は成氏方、ここの領地は管領のもの。よって安房へ連れていくことなど出来ない。
「金も無いのにおっ死にやがって」
「誰が金を出して処分したと思ってるんだい?」
「処分……て……」
その費用分働かなくてはいけない。だけどまだ幼い(七つ)荘之助、
三、四年は食わせ損ということで夏と冬の粗末な着物を貰っただけで一生ただ働き……
荘助、武家のおぼっちゃまから一気に下男奉公へ……
って何かこれ、……あ……小公女っぽい!!!!

【信乃】ねずみの友達とかいて!
【伏姫】いつも心はプリンセスのようで♪
【信乃】天竺からやってきた父上の友達の大富豪が助けてくれる!
【額蔵】中途半端な知識でパロ意識するのやめましょうよ!? ていうか正直中の人2009年のテレビドラマ版しか見てないですよね!?
ちなみに我が姉の得意分野の文学だったりする…^^ つまり私で言うとこの八犬伝のような作品なんだそうだ。
あだしごとはさておき次。

「そうなった時はもうほんと悔しかったけど」
「もう俺は天涯孤独の身です。そうやって生きていくしかありませんでした」
「でも――でも俺は、この時に生まれました」
「この時?」
「今のこの時に。――戦国の世に」
「身を立て、家を興さずして、何が男ですか」

彼が武士になる!!……と決めたのは十歳の春のこと。
ここから奉公の片手間に人目を忍んで武芸の練習、夜遅くまで手習いして……ウウッ眩しい!! ぺかーーー

「信乃さん」
「俺はずっと、あなたに憧れていたんです」
「こう言ってはあれですが、周りの人は皆つまらない連中だと思っていました。
 俺を阿保と思いたい奴には思わせておけばいい。
 俺が俺の本心を話したい人、それはあなただけでした」
「何ででしょう」
「ふしぎ、ですね」

【伏姫】やーいホモホモー
【額蔵】ってぇー!! ちょっと! 感動するシーンに水挟まないで下さいぃぃっ!!

でも大塚家と犬塚家はすごく近いのに断絶してたから話すに話せなくて機会が無くて。というところに番作の自殺があって自分の派遣があって。でも信乃は疑いのかたまり。荘助の方もそれを察していたのでやはり話すに話せない。
だがついに! ついにその本心を語り合うことが出来たのである! ヤッター!!

「……ね、額蔵」
「あの、おみくじの最後の句」
「それって、今日のことだったんじゃない?」
「……きっと、きっとそうだよ!」

ほら例えば……と信乃、おみくじの漢詩を講釈。こういうの好きそう。義実の位置か。信乃さんすごいです、と褒められていやぁまだ十一だしぃ〜と照れる。父上の蔵書があるから勉強するなら貸すよ! なやりとりの後、に。

「わ……おれはひとりで」
「額蔵もひとりだったけど」
「ちがうよ」
「今日からは、ちがう」
「ねっ!」
「兄弟になろう! わたしたちっ!」
「ううん、おれたち!」
「……!!」
「……もちろんっ!」
「もちろんです! 信乃さんっ!」

うう……脚色ありで訳したけど泣ける。・゚・(ノД`)・゚・。
ひとりじゃないよ!! みんな!!
信乃はどんなに嬉しかっただろう(´;ω;`) 小説にも書いたですけど。

この誓いに背かば天雷立地に〜〜と義兄弟の契りを交わす。
【伏姫】はぁ〜い雷はわたしにお・ま・か・せ☆
【玉梓】ばらりずんとな……(-_-;)

どっちが兄、弟? という話題、どーぞどーぞなやりとり。ここで荘助に名前がレベルアップ。ちなみに第十八回でゴリゴリしてた荘助はたぬき寝入りだったそうです。で、周りを欺く為に不仲の振りをいたしやしょう。
「何でふ女々しく花を手向、経を誦むのみ孝とせんや」 いやあ、いいこと言うなあ。そうよね、何かしないとね。
二人のもとへ近づく足音の正体は次の巻で。さぁて! これにて第二輯おしまい!
んで、馬琴さまあとがき。信乃と荘助頭良すぎじゃない? というツッコミに対して名のある賢者の師匠であった昔の聖賢達もすごく幼かったと例を引き犬士もそうなのよと解説。それから蜑崎パパが死んだのは長禄二年のことで荘助パパが死んだのはその八年後。海陸の道が絶えてたから死んでたとかそんな情報知らんかったのよー。

【信乃】と言うわけで、第二輯でした。
【額蔵】岩波一巻、これにておしまいです。
【伏姫】は〜いありがとうございま〜す。第二十回、ゲストは信乃と額蔵でした。
【信乃】ゲストに締めさせるパーソナリティって……まあいいけど。
【伏姫】はぁ〜〜〜……長かったですわね!!
【玉梓】名場面もこの先多くなるからのお……第三輯に入ったところで長さ的には変わらんのじゃないかのお……むしろもっと長くなるんじゃないかのう……
【伏姫】訳しちゃいたくなりますものね〜。うう〜ん、とにかく長いのに人を惹きつけちゃってどうにもとまらない、そんな八犬伝ってすんばらしー☆ ですわっ☆
【玉梓】正しく言うなら「悩ましい」と思うが。

管理人もこのコーナーをどう縮めるべきか、あるいはどう扱うべきか悩んでおります。だって他の本だって読みたいものね。そんで時間もないものね。読書に従って更新、と定義づけてはいるけれど、それだととてもじゃないが他のことが出来なくなるので、読書ではここまで読んでるけど原典めもではここまでしか書いてないよ、ってことがデフォになるかもです。
気負わずにやりたい。あくまでフリーダムなメモなのだから。

【玉梓】第三輯も読みどころいっぱいじゃ。
【伏姫】浜路口説きがあったり、道節登場、道節VS荘助があったり、芳流閣直前! だったり!
【信乃】大いなる運命が――
【額蔵】次々と歯車を合わせて、今まさに、動き出す!

というわけで第三輯を震えて、待て!
(以上2013/03/29迄)

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