私と巨田殿は僅かな証拠から考察し、事件現場各地から足をのばし、調査を進めました。
犯人の目星はそれほど時間をかけることなくつきました。
ついたのは……いいのですが……
【孝嗣】……。
【助友】浮かない顔だね。
【孝嗣】あなたも大体おわかりでしょう。
【助友】勿論。……でも。
【助友】どうして【彼】がこんなことをしているのかがわからない。
【助友】きっと君も同じことに悩んでいるんじゃないかな。
【孝嗣】ええ。
【助友】……じゃあ。そろそろ計画実行といこうじゃないか。
【孝嗣】……。
【小文吾】城の裏手でやられてしまってのお……。
【毛野】バカ! こんな状況で一人で出歩くからっ……!
毛野さんの命により、那古城の警備がさらに厳しくなりました。
しかし怪しい影の報告は絶えないのです。
【毛野】おい、小文吾、やめろよっ、おびき寄せる為だなんて…
【小文吾】わしがやらんといけんのじゃ。
【小文吾】無残に殺された……親兵衛たちの為に。
【毛野】……。
【孝嗣】おかしいと思ったんです。
【孝嗣】証拠は少ないわりに……あからさまに私にわかるように散りばめられていた。
【助友】そしてその全てが犬坂毛野、君を指している。
【孝嗣】何故なのですか。
【小文吾】……嘘じゃ。信じられん。
【毛野】……。
【毛野】小文吾に怪我させたのは、お前達か。
【助友】イグザクトリィ。あの石を持った黒い影は僕だよ。犬田殿には協力してもらったのさ。
【孝嗣】あなたが犬士の中で一番慕っているのは犬田殿ですからね。
【孝嗣】そして犬士の中で殺すつもりがなかったのも、犬田殿。
【助友】忍びないと思ったけれどね。彼を害すればきっと犯人が出てくると思ったんだよ。
【助友】まあ、僕も政木殿も、その【犯人】が。
【助友】君でなければ、と……祈っていたんだけどね。
【孝嗣】犬坂殿……残念ですが。
【孝嗣】……といきたいところなんですが、まるでわかっていません。
【助友】ただ言いたかっただけだよ! てへへ! 自ジャンルと自ジャンルのぶつかりあい!
【孝嗣】何故あなたは……自分の仲間である犬士達を次々に殺害したのですか。
【毛野】……ふ、はは。
【毛野】はははは。
【小文吾】毛野……さん?
【毛野】嫌気がさしたんだよ。犬士の絆ってのに。
【小文吾】……!
【毛野】最初はほとんど通り魔的なものだった。気付いたらオレは道節を殺してた。
【毛野】自分でも何が起こったのかまるでわからなくなって……
【毛野】でもな、思ったんだ。
【毛野】オレの属性は……最初から悪だったってな。
【毛野】そして、オレ達はみんな……幻想の彼方に消えちまうんだって。
【孝嗣】……っ。
【孝嗣】犬坂殿。なんで、どうして……そんな心に負けて……っ。
【孝嗣】あの日、父上の死をお伝えした時は……そんな心に負けない強い人であったはず、なのに!
【毛野】……。
【毛野】やっと、それに触れてくれたな。
【孝嗣】……え?
その時です。
犬坂殿は目にも止まらぬ速さで私の右手に短刀を握らせました。
そして……
ものすごい力で、私を自分の身に引きよせ……
【孝嗣】な……。
【孝嗣】な、なに、を……。
【毛野】ずっと……ずっと悔やんでた。河鯉殿の……こと。
【孝嗣】え……!?
【毛野】オレを殺すのは……お前じゃなきゃダメだった。
【毛野】だから……呼んだんだ。孝嗣……お前を、さ……。
【孝嗣】そんな……そんな!
【孝嗣】もう過ぎたことではないですか! それに父が腹を召したのは父の誤解ゆえ!
【毛野】でも……オレが殺したようなもん、だ。ぐっ、げふっ……。
私は犬坂殿の元に駆け寄ります。
倒れた彼の体は、少女のように細かった。
けれども勢いよく、血を零しています。
【孝嗣】犬坂殿!
【毛野】仇……取りたかった、だ、ろ?
【孝嗣】なにを……馬鹿なことを……。
【毛野】わか、る……よ……オレ、も……そう……だっ、た、し。
【毛野】それに……ほら……しん、べの、仇、にもなっ、た、し……。
【孝嗣】巨田殿! 犬田殿! 早く医師を!
【小文吾】……ぐふっ!
【助友】!? 犬田殿!?
【毛野】……こ、ぶん……ご……?
【小文吾】毒っちゅうのは……血が出るもんなんじゃのお……
【孝嗣】あ……あなたまで、何を……!!
【毛野】ば……か……オレ……おまえ、いかし、たく……て……
【小文吾】毛野さん一人で……逝かせは……せんよ……
【小文吾】それに……あの世で……ま、た……はちにん、に……
【小文吾】なれ……ば……。
【毛野】ほんと……ばか……。
【毛野】でも……うれ、し……い……。
【毛野】ありが……と……な……。
【毛野】やりなお……そ……う……
【毛野】……な。
【毛野】ふぃ~~~っ、クランクアップか~~。
【孝嗣】ひぎゃあああっ!!??! い、いいいいいいぬさかどのッ!?!?!?
【毛野】うん? 何でそんな驚いてんの。
【孝嗣】あ、ああああああああな、あなた、しんだんじゃ!?!?
【毛野】あー、これ血糊。
【孝嗣】ヘッ?!
【毛野】だからさっき信乃も言ったじゃん。撮影って。
【孝嗣】……。
【孝嗣】はい??????
【助友】ややっ! 僕としたことが!
【孝嗣】え……? 巨田殿……??
【助友】政木殿にこのプランのこと話すのすっかり忘れていたさあ! あ~~っはっはっは!
【孝嗣】……。ぷらん……????
【道節】おいおいしっかりしろよな助友。
【孝嗣】ワーーーーッ!!!?!?! 生きてるーーーーー!?!?!
【道節】俺様は死なねえよ。ガキの頃に一度死んでんだからな。
【大角】説得力ありますよね。
【現八】バカは死んでも治らなかったってことだな!
【道節】をい。
【親兵衛】も~助友くんてばー。
【孝嗣】こっちも生きてたーーーー!??!?!
【親兵衛】泣いて喜んでくれるなんてさすが孝嗣くんっ!
【大角】どっちかっていうと困惑と混乱の涙じゃないですかこれは。
【親兵衛】卯月朔日、うそをついてもいいって言う一年に一度のスペシャルデーだからさー。
【荘助】ちょっとした企画をやろうって話になったんですよー。
【信乃】最近はエイプリルフールにウェブでこういう面白企画やるのが風物詩になってんじゃん。
【小文吾】それにのっかったわけじゃのお。
【毛野】前から映画撮りたかったのもあったしさ……やるならやっぱミステリーとかサスペンスじゃん?
【親兵衛】死因とか殺害方法とか考えるのたのしかったよねー!
【親兵衛】なあに孝嗣くん怖い顔しちゃって。
【孝嗣】……。エイプリルフールとは。
【孝嗣】楽しい冗談で人を楽しませる為に嘘をつく日だと伺っております。
【孝嗣】……決して、人を悲しませ、あるいは混乱させる為にするものではないと。
【孝嗣】しかも。【犬士が犬士を殺す】?
【孝嗣】このような題材が……エイプリルフールに相応しいとでも?
【親兵衛】……え、え~っと。
【毛野】た、たかつ、ぐ……くーん……?
【孝嗣】……。
【孝嗣】……悪ふざけも。
【孝嗣】大・概・に! しなさい!!
【一同】ぎゃあああああああ!??!?!?!!!?!?!?!
その後、八犬士と巨田助友の姿を見た人はいない……
【毛野】というのはホントに嘘でオレ達ちゃんと生きてます。
【親兵衛】みんなたのしかったかなー??
【孝嗣】犬坂殿、親兵衛殿……あなたってひとわ~~~~~
【毛野】どうどうどう。
【親兵衛】おこんないおこんなーい♪
ということでなんだこれ。犬士じゃなくてまさかの扇谷方主役でした(助友と孝嗣を勝手にこう呼んでる)
この辺もエイプリルフールなんだな! うんうん。
元ネタは去年の夏ごろ描いたこの↓らくがきでした。
タイトル画面として出すつもりだったんでした。玉さんシルエットだけの登場だったし信乃は開始からしんでるのでボツ。
孝嗣父・守如(と蟹目前)死亡の件は毛野のトラウマランキング二位くらいに入ってそうなエピソードなので、
一度なんかねたとして作っておきたかったのでした。
道節と信乃が最初の方の被害者なのはこの二人の所為で守如が死んだようなものだから、らしい。
うん、最初に書いたけどひさびさに長いや。
文字でねた出ししたんですがカットを絵に起こす時大変だったので、
やっぱ絵描きじゃなくてよかった! って思いました。どうなんだそれ。
そして触れるのが最後になってしまいましたが孝嗣くんねたとかでこんなに主役級になったのは初めてでした。
キャラデザが安定してない? 最初の発表から大分変ってる? ぜんぶしってる!